作り手から見るNZワイン

 「この国の代表ワインと言えばソーヴィニヨン・ブランですが、若い熱心なワインメーカーの間では、つくるのが簡単なソーヴィニヨン・ブランではもの足らず、作り手の個性が出る、シャルドネやピノ・ノアールなどに挑戦する人が増えているようです」
 南島クライストチャーチからクルマで約四〇分北上したところに位置するワイパラは、石灰岩質の土壌が特徴で、ピノ・ノアールやピノ・グリ、リーズリングなどの産地として有名なエリアだ。『グレイストーン/マッドウォーター』で働く日本人セラー・ハンドの小山浩平氏と、ワインメーカーのドン・マックスウェル氏を訪ねて、最近のNZワインのトレンドを伺った。
 NZワインづくりの歴史は、一八三六年に英国人の植民者によって始められ、この国では若い産業のひとつ。現在、主要な一〇エリアでワインづくりが行われており、二〇一二年のワイナリー数は七〇三件、ブドウの作付けエリアは約三万四〇〇〇ヘクタール、年間生産量は一兆九万四〇〇〇リットル、そのうち一兆七万九〇〇〇リットルが海外へ輸出されている。
「NZ国内の市場は購買力が低いので、九割が海外へ輸出されています。この国のワイン自主規制団体が、厳しくワインの品質を管理しており、海外への輸出は、数々の品質検査を経て輸出認可を取得しなくてはなりません。逆に言えば、一五〇〇円ぐらいの値段で、スーパーで売られている中堅ワインでも、良質なワインが買えるということです」
 ワインの海外輸出先はオーストラリアが全体の三二%、英国が二四%、米国が二一%、そして日本への輸出は一%の一一三〇〇リットルと、輸出量では全体の一一位。しかし高額なトップエンドのものが主で、NZワインの貴重な輸出国のひとつとなっている。
「NZはクリーン・グリーンな国というイメージが強いですが、ワインづくりにもそれが反映されており、有機栽培でつくられているワインは、全体の約一五〜二〇%を占めています。乾燥していて朝晩の気温の差が激しい、この国の気候が有機栽培に適しているのが理由です。有機栽培は、消費者にとっても、労働者にとっても良いことですが、除草剤が使えないので、ブドウの木の下の雑草をひたすら刈ることになりますが」
 NZワインのフラッグシップのソーヴィニヨン・ブランは全体量の六割を占めており、次いでピノ・ノアールの一五%、シャルドネの九%という数字が、現在のNZワインづくりの傾向を表しているだろう。
「NZワインメーカーの特徴は、ワインの大量生産を目的とする大規模なワインメーカーよりも、全体の八〇%を占める小規模な職工的ワインメーカーで成り立っているという点です。気候、地質、水というこの国の素晴らしい自然を元に『個性的で良質なワイン』造りをめざすワインメーカーが多いということは、今後のNZワイン産業はもっと面白くなると思いますよ」
(いーでぃやすこ・クライストチャーチ在住)
2013年特別号上掲載

月刊 酒文化2013年07月号掲載