午前1時以降はダメよ

 「飲酒はニュージーランド文化の大きな一部」とは、この国でよく聞かれるフレーズだ。実際、ラグビーの試合を観ながら、BBQを食べながら、週末のホームパーティ、バーやナイトクラブなどで、ニュージーランド人はよく酒を飲む。ビール、ワインがもっぱら彼等が好んでよく飲む酒だが、その他バーボン、ウイスキー、テキーラ、ジン、ウォッカなどなんでもござれ。NZの法律では、飲酒は18歳からだが、親がティーンエイジャーの子供に酒を買ってやってパーティを家で開くのは親も公認、週末のイベントのひとつだ。
 一方、過度な飲酒がニュージーランド社会の大きな問題となっているのも事実で、飲酒による暴力事件や交通事故が増加している。そんな現状を改善しようと、酒の販売を規制する法律『ローカル・アルコール・ポリシー』が2013年に制定されたのは記憶に新しい。
 この国で酒類を販売するにはライセンスが必要で、各市議会がライセンスを発行する。ライセンスの種類によって、酒を販売できる営業時間が規制されている。パブ・レストラン・バーは午前8時から早朝4時まで、酒屋やスーパーは午前7時から午後11時までと現行では決められている。
 しかし増加する飲酒の問題から、NZの各都市ではパブやバーの営業時間を短縮しようという声が大きくなっており、『午前1時以降一方通行ドア』という規制を取り入れようと、各市議会はやっきになっている。この『午前1時以降一方通行ドア』規制とは、午前1時以降パブやバーから出ることは出来ても入店もしくは再来店することはできず、閉店時間は3時まで。「店の売上の30%は午前零時から3時の間」と、パブやバーのオーナー達はこの新たな規制に反対する者が多く、反対に観光局や医療関係者、警察などは、「病院へ担ぎ込まれる緊急患者の30%は飲酒が原因」と、飲酒による暴力や事故の減少の第一歩と歓迎している。
 ただし、首都ウエリントンの地元紙が行ったアンケートによると、87%の市民が営業時間の変更に反対しており、「思慮深く飲酒すれば、営業時間は関係ない」と答える人が多かった。さらに、市民の多くは、パブやバーの営業時間が多少変わっても、この国の飲酒に対する態度、飲み方が変わらなければ、暴力や事故は減らないのではないかと懸念している。
 さらに、政府は2011年に20歳以下は飲酒“ゼロ・リミット”、つまり一口でも酒を飲んで運転すれば罰金と免許停止という飲酒運転の厳しい規制に乗り出した。また、テレビのコマーシャルでも飲酒事故のショッキングな映像を流して、国民の飲酒に対する認識の変化をうながしている。
 果たして、飲酒の規制が新しく変わって飲酒に対する市民の認識も変わるか? それは規制が変わる予定の2014年以降に答えがでるはずだ。
(いーでぃやすこ・クライストチャーチ在住)
2013年秋号掲載

月刊 酒文化2013年08月号掲載