真夏の正月のおもてなし

 南半球ニュージーランドの師走は、気温が30度を超す日も多い夏の時期だ。在住20年になるが、今でも真夏のクリスマスと正月にはしっくりこない。日本の清々しい冬日に迎える、厳かな正月が懐かしい。キーウイ達にとっては、クリスマスの方が正月より大事な行事であり、大晦日と元旦はビーチやキャンプ場でパーティというのが一般的だ。
 「クリスマスは家族で過ごす」というのが、キーウイ流クリスマスの過ごし方で、遠く離れて住む家族や親類が一同に集まって、ご馳走を食べお酒を楽しみながら、どんな一年だったかを報告しあう。
 一昨年のクリスマスに、夫の妹アンの家に招待された時、朝食にふるまわれたNZ産の発泡ワイン(バブリーと呼ぶ)に、角砂糖とストロベリーを入れたドリンクが、ゲストに大好評だった。「朝食からワイン!?」と最初は面食らったが、アン曰く、クリスマスの遅い朝食にピッタリだそうで、角砂糖を入れると発泡ワインの泡が、いつまでもシャワシャワと湧き出てくるのが美味しさの秘密らしい。
 このバブリーの一杯から、ビール、ワインへと、クリスマスのお酒は延々と続いていったのだが、もうひとつの発見は、ワイングラスのリングだ。これはワイングラスの足の部分に引っ掛けるリングで、様々な色のガラス製の飾りが付いたもの。ゲストが多いときに自分のグラスを探す目印になって重宝し、なおかつお洒落。6個ぐらいのセットの様々なデザインが雑貨店などで売られている。
 クリスマスのご馳走は、家庭によって様々だが、定番はメインが七面鳥またはチキンのローストにクランベリーソースやグレービーソースを添えたもの、又はハムの丸焼き。欠かせないのは新ジャガの付け合せで、茹でてサラダにする。旬のグリーンピースもミント味のものが人気。卵白のケーキに生クリームと採れたてのイチゴやベリー類を飾ったNZデザートの「パブロバ」も人気メニュー。レーズンなどがゴッテリ詰まったクリスマス・ミンツパイやブランデーがたっぷり沁み込んだクリスマス・ケーキも人気のデザートだ。
 クリスマスと比べると、特別な正月料理やお屠蘇はなく、アウトドアでTシャツに短パン、ビーチサンダルをつっかけて、キーンと冷えたビールまたは白ワインで乾杯するのが、この国のお正月だ。 
 年末のパーティで大事なのは、良く冷えたビールやワインが用意されていること。ホストは大きなバケツやクーラーボックスの中にガンガン氷と水を入れて用意し、ゲストが持ってきたビールやワインを冷やすのが大事。NZ特産ヒツジ肉をBBQで焼いたら冷たいビールにピッタリでお薦めだ。
 新年の迎え方に違いはあれ、世界万国、新しい年の平和と幸福を祈るのは、同じであろう。皆様、良いお年を。乾杯!
(いーでぃやすこ・クライストチャーチ在住)  ■
2014年冬号掲載

月刊 酒文化2014年02月号掲載