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日本酒の起源酒〜今も伝承菩提元仕込み

日本酒やワイン、ビールといった醸造酒は古くから人々に飲まれてきた。例えばビールは、5000年以上前のエジプトで原型となる麦からつくった酒が飲まれていたし、ワインも果汁を発酵させればよいだけなので、紀元前から飲まれている。では日本酒はどうだろうか。
 米から作る醸造酒という意味では、すでに万葉の時代から飲まれているが、これはどぶろくのようなもので、今の清酒とはかなり異なる。麹菌や酵母を使い、並行復発酵という方式で米の糖分を余すことなく酒にするという意味では、その起源は室町時代後期に確立したようだ。
同時期から江戸初期までの間に、火入れ殺菌により発酵を止めて酒を安定させる技術、にごり酒をこして澄んだ酒にする方法が発見され、ほぼ今の清酒の原型ができあがる。当時の銘酒の産地としては、関西の洛中、奈良、伊丹などがあげられ、灘が名声を博するのはもう少ししてからのことだ。
室町後期に確立した酒の造り方は、菩提元仕込み(別名水元仕込み)と呼ばれるもので、もろみを造るときに、麹米を袋に入れて、お湯の中で揉みだしていくという特徴を持つ。原理的には生元・山廃など現代の酒の系譜に連なるのだが、いかにも手間がかかるので、明治初期にはこの方式はほぼ消滅した。
しかし、この菩提元の発祥の地である奈良県では、今でもこの方式の酒造りが伝承されている。引退した杜氏と共に若い蔵元が水元仕込みを復活させたと聞き、香芝市の大倉本家を訪ねた。ろ過も火入れのしない生の状態で瓶詰めされた酒は、上品なヨーグルトに近い不思議な味わいであった。製造量も少なく、県内限定の販売ということで今年はもう完売してしまったようだが、来年も仕込むとのことなので、一度は試してみたい酒だとお薦めできる。

2005年06月08日掲載