乾杯に想うこと  祈念の時は日本酒で

 自衛隊のイラク派遣も国会で決定し、いよいよ陸上部隊の先発隊が旅立っていった。その壮行会の様子をテレビで中継していたが、ひとつ気になったことがある。このときにどのような乾杯がされていたかということである。
 古来、再び会えるかどうかわからぬ旅に赴くときには水盃がかわされてきた。だから今回のように壮行の意図が強ければ酒盃で別れを惜しむべきであろう。しかしながら昨今は飲酒運転の取り調べも大変厳しくなっている。自衛隊のイラク派遣の関係者がその帰途に酒気帯び運転で捕まってはしゃれになるまい。
 北海道では日常的な移動手段に自家用車を利用している者も多いはずだ。そう考えると特に深い考えはなくても酒やビールは口にせず、ソフトドリンク(ノンアルコールという意味では水である)で乾杯した人も多いのではなかろうか。あるいは今回の派遣の困難な状況をおもんばかり、あえて水を選んだ人もいたかもしれない。
 場面は変わって私が参加したとある賀詞交換会でのこと。乾杯は当然のようにビールである。別にビールがいけないというわけではない。しかし、大抵の場合には乾杯の発声をされる方の挨拶は長い。この間にグラスを充たしていたビールの泡はほとんど消えてしまい、後に残るのは気の抜けたビールである。
 それに挨拶の最後は「ご来席のみなさまのますますのご発展と健康を祈念して乾杯!」と結ばれることが多い。祈念するということは何かに祈っているわけだ。格別信仰心は強くない小生だが、こういう場合にはなんとなくカミ様というものをイメージしている人が多いのではないだろうか。もしカミ様に祈るのであればやはりささげる酒は冷やの日本酒が作法にかなっているのではなかろうか。

2004年02月17日掲載