開発力の源は酒税法??

 発泡酒という、世界に類をみない酒が登場したのは今から10年前のことだ。それ以来多少停滞した年もあるが、ほぼ毎年販売量を増やし、現在ではビールと発泡酒の合計に対して35%のボリュームを占めるようになった。しかもビールには飲食店用の樽生が4分の1含まれるので、缶だけに限定すると、すでに発泡酒の方が多い。その原動力となったのはビールよりも安いという価格面での評価だ。
 ビールの原料は麦芽とホップ。これに好みで米・コーン・スターチなどを使うのが一般的だ。酒税法上のビールは麦芽の使用比率を全体の67%以上と規定し、それ以下のものは雑酒類の発泡酒され、商品はなかったものの酒税が非常に安かった。最初に発売された発泡酒サントリー「ホップス」は麦芽の使用比率を65%に抑えたが、ビールと遜色ないものであった。
 しかしそのような酒が売れはじめると国税庁は黙ってはいない。数次に渡る発泡酒の増税を行い、現在では麦芽使用比率が50%を超えるものはビールと同じ酒税額であり、最も酒税の安い麦芽使用比率25%以下のものもビール並みの酒税に近づきつつある。そもそもビールと発泡酒の価格差のほとんどは酒税額によるものだからだ。
 さらに今年は一切麦芽を使わないため、発砲酒よりも酒税がやすいサッポロビール「ドラフトワン」、ビールに麦焼酎を少々まぜてチューハイと同じ酒税になったサントリー「麦風」という隙間を狙った画期的な商品が発売された。酒税が安くなった分、他の発泡酒よりも小売価格は10円以上安くなっている。
 このような商品を開発できるメーカーは外国にはないだろう。日本固有の酒税法のおかげで日本の酒類メーカーの商品開発力、創造力は職人芸の域まで鍛え上げられているともいえる。

2004年04月15日掲載