日本酒の消費減――お燗しないのが理由

 いよいよ日本酒のおいしい季節であるが、日本酒の消費はここ数年大きく減少している。その理由は、飲酒人口の減少、若者の日本酒離れ、焼酎ブーム、景気低迷などいろいろな事情が複雑に絡み合っているが、私が声を大にして言いたいのは、お燗酒を軽視してきたことのツケだということだ。
 そもそも日本酒の最もポピュラーな飲み方であり、他のお酒と差別化してきたのがお燗である。ところが過去10年以上、酒蔵も酒販店も冷たくして飲むお酒、つまり、吟醸酒と生酒ばかり喧伝してきた。しかし、お酒のタイプはお燗に適している味と冷たくして飲むものとでは異なる。生や吟醸は味や香りに個性を持つおいしいお酒で、燗には不向きで、食中酒としての適性を考えたときにも幅が狭い。だが、居酒屋という世界に冠たる飲食業態をここまで発展させたことからもわかる通り、日本人の酒の飲み方は、圧倒的に食中酒なのである。肴なしで酒だけを味わうということは日常生活ではあまりない。
 燗酒が少なくなったもうひとつの理由は手間の問題だ。湯煎で燗をするなどという面倒な世話焼きは今の家庭にはいない。手軽なのは電子レンジであるが、これに徳利を入れると上部ばかり熱くなり、全体に温めることが難しい。この解決策を伝授していただいた。お銚子の上半分をアルミホイルの帽子で覆うのだ。カバーをつけると下部のみに電磁波が当たり下から温めることになり、内部で対流が起こり上手に燗ができる。ただし、そのアルミホイルはレンジの底・壁面・天井などと絶対に触れてはいけない。レンジ内で火花が飛んで大変危険だ。酔っぱらいには難しい作業であるが、トライする価値は十分にある。

2003年10月07日掲載