焼酎人気−伝統と変革が混在

 日本で一番たくさん飲まれている酒類はビールだが、二番目に多いのは何であろうか。答は発泡酒なのだが、これは税法上区分けされているだけで、実態としてはビールと同じものと考えれば、正解は清酒となる。清酒が種類別消費量トップの座をビールに明け渡したのは1959年のことだが、それ以来ビールに追いつくことはなくても、第2位の座は堅持してきた。
 だが、昨年の上半期には微差ながら焼酎に抜かれて事件となった。清酒は冬場の消費が多いので年間では2位の座を守ったが、今年の上半期はさらにその差が広がった。焼酎は前年比5%以上の勢いで増えているので、たぶん年間でも逆転することになるだろう。
 焼酎に人気が集まる理由を一言でいえば、伝統と変革が混在する自由さにある。近代装置産業として激烈な価格競争を繰り広げる甲類焼酎。現代の嗜好にマッチするように新しい製法を取り入れる麦焼酎。かめ仕込みや黒麹など一度は見捨てられた伝統的な製法を復活させて高い人気を呼ぶいも焼酎。メーカーそれぞれが、自由な立場から規模の大小を越えて切磋琢磨している。
 本格焼酎の中で特筆すべきもののひとつがそば焼酎である。今でこそ本格焼酎大手4社の一画を占める宮崎の雲海酒造も、かつては宮崎県五ケ瀬地方の小さな企業だった。地元特産のソバを原料に使って焼酎を作れないかと研究を重ね、73年に初めてそば焼酎を発売した。
 しかもその製法を特許申請しなかったので、地元各社が追随してそば焼酎は宮崎県の特産品として大きく成長したのである。現在でこそ北海道や長野県でも製造されるそば焼酎は、宮崎県の小さな企業の創造性あふれる努力で生まれたのである。

2003年09月11日掲載