日本酒復権は一朝一夕にならず

酒類のマーケットで、ここ数年明暗をくっきりと分けている種類が多い。好調なものは焼酎とリキュール、不調なものはウイスキーと日本酒である。
好調な理由は比較的容易に説明がつく。焼酎の場合は長年にわたって訴求されてきた健康イメージの浸透、ソフトな味わい、比較的割安な価格、低アルコール志向、地酒と共通する豊かなローカル色などが相まって好調を維持していると考えられる。
リキュールは、主に低アルコール飲料のことだが、市価の下落、大手の参入による活発な商品開発、コンビニエンスストア商材としての適合、苦みから甘みへの嗜好変化――などに影響を受けていると思う。
同様に減少傾向にある日本酒とウィスキーの場合にも理由は数多く考えられるが、そうなると有効な手段が講じにくい。どちらも若年層の飲酒率が少ない。女性の支持が低いなど表層的な原因は明確だが、いざその解決策をどうするかというと、有効な手だてがみつからない。
特に深刻なのは日本酒である。昨年の出荷数量は全盛期の半分程度にまで落ち込んでいるのだ。しかもウイスキーのような業界リーダーは不在で、2千社といわれるメーカーの大多数が赤字になっているといわれている。
そんな中、“今のニッポン人には日本が足りない”と考え「日本酒で乾杯推進会議」という有識者の会が発足した。さまざまな伝統産業・伝統芸能と手を携えて日本文化のよいところを見直していこうと考えてのことだ。
縁あってこの会の運営委員を拝命して、発足からお手伝いをさせていただいているが、壮大なテーマの前で、まさに「自分には日本が足りない」と思い知らされることが多く、「ライフワークとして取り組まなければ」と思いを新たにしている。

2004年10月30日掲載