酒の販売減少―市場を世界に求めよ

バブル経済が崩壊し、日本の消費者物価が安定するようになってからすでに10年以上たった。これは、同じ商品を同じ量で販売しているだけでは、売上が増えないことを意味する。同時期に酒税改正も行われて、ビールや清酒よりも酒税負担の少ない発泡酒や焼酎の比率が高くなった酒類の世界では、直近5年間だけで販売金額が1兆円以上減り、5兆4千億円余となっている。
しかし、消費金額が減少に向かうのは、むしろこれからが本番と言える。戦後一貫して増えてきた日本の人口が減少に転じる瞬間が刻々と近づいているからだ。
人の数が減れば単純に購入量は減る。特に酒類・食品といった分野ではその傾向が顕著に現れる。家電業界や自動車のように新モデルを発売して価格を改定したり、新しい需要を開発するといったことも容易ではない。
そんな中で清酒や本格焼酎といった日本固有の酒類では、輸出に力を入れるところが増えてきた。先行してきた清酒では、アメリカ・台湾・中国といった国や地域に着々と市場が根付き始めている。日本で一般に飲まれている酒よりも1ランク上の吟醸酒や大吟醸といった酒がシャンパンなどと並んで楽しまれているのである。先日は台湾の最高級ホテルのひとつ「フォルモサ・リージェント」で日本酒の会が開かれたくらいである。
これはひとり酒だけの話ではない。香港や上海といった経済発展の著しい地域では、高級リンゴをはじめとする日本の果物にも人気が集まっているという。メードインジャパンの価値が最先端の工業製品だけではなく、巧緻な職人芸の世界である酒や農産品の世界でも認められつつある。国内市場の縮小が待ったなしとなった今、新しい市場を世界に求めるのはマーケティングの常道である。

2004年12月11日掲載