酒の仕込み・・・・異常気象にも対応を

 酒造りは第二次産業ではあっても、かなり農業寄りの産業だということをいま一度思い出したのが、今年だったのではないだろうか。
 史上最高回数を記録した台風の上陸、そしてそれに伴う風水害、さらに極めつけは新潟中部を襲った地震だ。都会のサラリーマンや公務員であれば、自宅さえ被害を受けなければ、天災で生活が脅かされることはあまりない。
今回の天災もはじめのうちは、「米の作況はどうなるだろう」「ブドウは大丈夫かな」と心配していた程度であったが、度重なるうちに様相はどんどん悪化していった。製造業とは言っても秋から冬に集中的に仕込む日本酒やワイン、本格焼酎の場合には、その前後に災害を被ると、仕込みそのものができなくなり、一年間の努力が水泡に帰するという部分が農業と一緒なのである。
 ある九州の蔵元に聞いた話では、最初の台風の被害で蔵の屋根が飛んだ。修理しようと業者を手配し、ようやく屋根修理が始まったところで次の台風に襲われる。いくら市場で人気が集まっても、仕込みの期間は限られているので、時期を逃せば、増産どころか減産になりかねないということであった。
 今冬は、12月の東京の平均気温が宮崎県並みという暖かさである。地球全体の温暖化でこのような異常気象が毎年進行していくとしたら、冬の寒さを利用して行われる酒造りの計画も、根本から考え直さないといけない時代がやってくる。
そもそも、ブドウや米、サツマイモといった原料作物の収穫時期すらずれてくるかもしれないので、ボジョレーヌーボなどの解禁日もずれてしまうかもしれないのだ。
 「昔は、寒造りといって、1月に仕込む酒を最高のものと評価していたものだ」なんて言われる時代が来ないように願いたいものである。

2004年12月25日掲載