個性生かし支持獲得

2月後半のまだ寒い時期に、スコットランドの蒸留所を訪れる機会があった。日本に比べると、北海道よりもかなり高緯度になる地域なので、どれほど寒いだろうかと覚悟を決めた。しかし、道中は穏やかな天気続き、寒さも東北あたりの冬とあまり変わらない程度で、いささか拍子抜けであった。
 それでも一日の中で晴天から吹雪まで体験できるなど、3年前に訪れた初夏とは全く異なる顔を見せてくれた。
当地の地酒ともいうべきスコッチウイスキーは、全体の9割以上を占めるブレンデッドウイスキーの需要減少はいまだとまらず、市場は決して拡大していない。しかも日本同様に地元でのウイスキー愛飲者は高齢化していて、先行きも予断を許すものではない。
それでも、最近は全体の1割前後のシングルモルトウイスキーが増加傾向なので、蒸留所の雰囲気は明るいものであった。シングルモルトとは、その蒸留所で造ったモルトウイスキーだけを詰めたものであり、多くの場合には10年、12年以上熟成されたものが中心で、価格的にもブレンデッドの倍以上していた。
そのかわり、香りや味わいに明瞭な個性があり、万人向けの酒は決して多くない。アイラ島にある強烈な個性で有名はラフロイグ蒸留所では、当社のウイスキーを飲んだ人は必ず「Hate or Love(大嫌いか、大好きか)」のどちらかになると言っていたくらいである。
酒類の市場は人口の増減と飲酒率の高低で規模が定まっていく。先進国では、人口は横這いか減少傾向にあり、飲酒率も決して高まる方向には進まない。そのような中でウイスキーのように高アルコールの酒がマーケットを獲得するためには、強い支持をもたれる酒になっていくしかない。「大嫌いか大好きか」個性を生かした商品づくりには欠かせない考え方だと思う。

2005年04月02日掲載