地酒の応援団

北市内、小龍包の鼎泰豊やマンゴーかき氷の氷館がある永康街地区には小洒落た店が多い。ほ
とんどは洋酒主体だが、その中に「千文正」という地酒バーがある。語学学校を併設する師範大学の裏手にあり、留学生の口コミで人気が広がり、今では国籍、職種を問わず、地酒ファンが集う店となった。
取り扱う酒の蔵元数は約五〇。冷酒だけでなく、客の好みに応じて大吟醸酒をカクテルに使う大胆なパフォーマンスが台北の若者に受けている。焼酎をベースにしたオリジナル・カクテルも人気があり、泡盛の取り扱いも検討されている。
千文正は黄千恵さんを中心に三人のオーナーが手がけるバーの二号店。
店員さんも各々が地酒ファンで、試飲を重ねながら勉強している。
二月、台北市内でも屈指の高級住宅街である安和路地区で、山形県の蔵元一五社によるふるまい酒が行われた。台湾で地酒が受け入れられるか手応えを探ることが目的である。
会場は、「松熹」(和食)、「焼肉工房」(居酒屋)、「広島焼」(お好み焼き)の三店。松熹は、李登輝・前総統が贔屓にされる李栄松さんがオーナーで、張恵妹などのトップクラス台の芸能人や陳水扁総統の娘夫婦も訪れる。焼肉工房と広島焼のオーナーは、「阿漢」と名乗る趙錦漢氏。焼肉工房の看板には日本酒応援団と付記している。会場は各オーナーのご厚意で、無償で提供いただいた。
ふるまい酒で準備した酒は四合瓶で六〇本。陶製のぐい呑みも一〇〇個、山形から持ち込み、店の外には幟のぼりを掲げていただいた。
蔵元の方々が驚かれたのは、台湾の人々の飲みっぷり。ぐい飲みを一気に干してしまうし、若い女性もすいすい飲む。山形県醸青会という蔵元の集まりからは、一行の帰国翌日、六月に開催される「フード・台北」に出展したいと連絡をいただいた。
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◆地酒バー「千文正」の関係者たち

地酒好きの若い女性はけっこう多い。千文正の常連客の彭彩華さんは、尾牙(忘年会)では一升瓶をずっと抱えていた。ワイン・バーで知り合った劉梅菊さんも、地酒に目を輝かせる。
こうした人たちにも地酒の飲み方・楽しみ方を覚えてもらえれば、台湾ではもっともっと地酒の需要が高まる余地があると思う。
実際には輸入元や蔵元による地酒のミニセミナーが繰り返し行われることが望ましいと考えている。
とにかく、台湾にはいたる所に地酒の応援団がいる。

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◆永康街では家庭的イメージに惹かれ常連となる人が多い。写真は「Maui」


(うさみよしあき:(財)交流協会台北事務所)

月刊 酒文化2004年05月号掲載