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地酒のアンテナショップ登場

 地酒の販売促進には、試飲がとても重要だと認識している。ただ試飲させるのではなく、地酒ファンを掴むための戦略性、戦術性が必要だと思う。
 台湾に輸出されている地酒の場合、名門酒会の輸入元は、週末には微風広場やジャスコの売り場で試飲用のコーナーを設け、試飲してもらいながら販売している。地酒協同組合は年に一〜二回、台北市内のホテルで地酒祭りを開催しつつ、市井の料理店でも蔵元関係者の訪台を踏まえて試飲を繰り返し実施している。
 こうした機会を拝見していると、地酒に関心を持つ台湾人はだんだん増えてきたように思える。週末、友人と携帯電話で相談しながら購入する地酒のブランドを確認しているといった台湾人の若者も見かけるようになった。関係者の真剣な努力は承知しているものの、しかしながら台湾市場を開拓するという点では、まだまだ物足りなさを感じている。
 七月のある日、銘酒倶楽部の蔵元関係者が台北に集まった。滞在中、フォルモッサ・リージェントでマスコミ向けの説明会も行われたが、特に輸入元の全社員に対して蔵元関係者が直接、地酒のレクチャーを実施したことに感心している。営業担当に扱う商品の特性を掴ませるという作業はとても重要な課程だと思う。
 八月には地酒協同組合の輸入元の友士が、台湾で初めてとなる地酒を中心としたアンテナショップを開設した。現在販売しているのは飲料と酒器だけだが、関係者によると地酒用の肴を取りそろえることも検討されている。将来的には酒類関係の書籍や各蔵元の販促グッズなども含めて品揃えし、酒に関心がある人達が集まるサロンとして発展することに期待している。
 年内には、香港で地酒普及に尽力しているシティ・スーパーが台湾一号店をオープンさせる。
 台湾最大のワイン輸入企業、星坊も、地酒取り扱いの拡大を目指している。社長と輸入担当者が商談先の絞り込みのため、六月には新潟を、一〇月には山形を訪れた。ワイン輸入二番手の易元も地酒に関心を寄せるようになった。
 大手やグループと異なり、独自に台湾に代理店を持つ蔵元としては熊本の通潤と京都の玉乃光があったが、佐渡の尾畑酒造も代理店を決め、輸出を開始した。
 こうして振り返ってみると、台湾でもだんだん、地酒普及のためのツールが整ってきたように思われる。ここから先は、地酒のファンをつくり、リピーターを確保する努力の効率性が問われる。そのためには各蔵元や各グループの関係者が足の引っ張り合いをせず、協調して市場開拓にあたることが重要だ。
 私事ながら、帰任に伴い、台湾からのレポートは今回が最終回となる。この機会を設けていただいた酒文化研究所、貴重な情報を提供いただいた蔵元関係各位、台湾の輸入元や料飲店の関係各位、ならびに、拙文にもかかわらず関心を持って目を通していただいた読者各位に篤く御礼を申し上げる。日本伝統酒に乾杯。
(うさみよしあき:(財)交流協会台北事務所)

月刊 酒文化2004年11月号掲載