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世界拡販を目指すブルックリン・ブルワリー

 ここ数年、ブルックリンが何かと話題をさらっている。近年開発が進み、特にウィリアムズバーグでは、マンハッタンを一望できる川沿いを中心に、一面ガラス張りの瀟洒なコンドミニアムが立ち並ぶ。倉庫を改造したレストランや個性的な雑貨、アンティークショップなどが軒を並べ、国内外からの観光客が大挙して押し寄せる。
 「メイド・イン・ブルックリン」でもイチ押しの商品と言えば、ブルックリン・ブルワリーでつくられるクラフトビールであろう。1988年の創業以来、次々とクオリティーの高いビールが考案され、著名なデザイナー、ミルトン・グレイザー氏の手掛けたロゴマークでブランドイメージが定着した。
 ブルックリン・ブルワリーを訪れるならマンハッタンから延びる地下鉄Lラインが便利だ。イーストリバーを超えたひとつ先「べッドフォード・アベニュー」駅で下車する。ここから歩くこと5、6分。おなじみの緑のロゴマークが外壁に描かれているため迷うことなく辿りつける。
 お酒を扱うため入口では、年齢確認の身分証明を提示する。週末30分の無料ツアー希望者にはあらかじめ、集合時間の書いた小さいチケットがここで渡される。このツアーでは試飲が含まれていないため、ビールを味わいたい人は、入口付近の売店でトークンと呼ばれるコインのようなものを5ドルで購入。バーカウンターで好きなビールを注文する。メニューボードには、アルコール度数の書かれたビールの名前が並ぶ。「アメリカンエール」「サマーエール」「ディフェンダー」何にしてよいやら。一番ポピュラーなビールは? と尋ねるとやっぱり伝統的なレシピで定番の「ラガー」を勧められる。
 ロゴ付のプラスチックカップに注がれたできたてビールをひと口喉に流し込んでみる。ホップのさわやかな香りと適度な苦みに、喉元がきゅっと引き締まる感覚だ。アルコールがフワッと回る。ツアーが始まるまでの10分の待ち時間、あっという間に1杯飲み干してしまった。
 私が参加したのは2時出発。14名と小規模グループだ。ツアーと言っても見学場所は2カ所だけで、もっぱら案内してくれるガイドの話を聞く形になる。ガイドもビール片手に、少しほろ酔い気分で饒舌だ。参加者はブラジルやフランス、イギリス、米国のミネソタなど、ニューヨーク外からの観光客ばかり。これもブルックリン・ブルワリーの知名度たるゆえんか。
 まず参加者へのクイズ。「ビールの主原料を4つ、言ってみて」「水」「ホップ」「麦」。最後の一つ「イースト」と答えた参加者に、ガイドが「プレゼント」とばかりトークンを投げてよこす。
 次に麦芽やホップが手渡され、順番に匂いを嗅いでみる。
 ツアーはブルックリン・ブルワリーの創立の話へと続く。創立に関わったスティーブ・ヒンディ氏がAP通信の記者でイスラム圏に滞在していた時代、容易に酒が手に入らないことから自家製ビールに目覚めた話はネットでも検索できる。下調べしておけば、英語の説明でも苦にはならない。
 このブルワリーは地価高騰の影響もあり、ニューヨーク州にある別の地域での操業計画が進行中だ。また近年は他国企業との提携も推し進めている。日本のキリンと合弁会社を立ち上げたというニュースは記憶に新しい。ブルックリン・ブルワリーのブランドが、世界規模での流通に向けてどのような展開を見せてくれるのか、今後も目が離せない。
(あおきたかこ・ニューヨーク在住)
2017年夏号掲載

月刊 酒文化2017年06月号掲載