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スコッチウイスキー・エクスピアリアンス

 バーボンを見にケンタッキーへ行ってみようと常々考えていたのだが、ヨーロッパへ行く格安航空券を見つけてしまい、西ではなく東へ旅することとなった。米国東海岸は日本に比べヨーロッパに近く、ニューヨークからエジンバラへの直行便もある。往路エジンバラ着、帰りはパリからでなんと五三〇ドル(約六万円)だ。
 早速、エジンバラ市街にあるスコッチウイスキー・エクスピアリアンスという施設を訪ねる。エジンバラ訪問は三〇年ぶりで、前回はホーリールード宮殿を訪ねてみたが、雨模様で閑散としていた記憶がある。それが今回はあふれるほどの人、人。とりわけ中国語を話す観光客が多い。エジンバラ城近くのこのウイスキー博物館も、欧米人はもとよりアジアからと思しき観光客が多数列に並んでいた。
 見学ツアーは四種類をテイスティングするゴールドツアーが定番なようだ。だが、アルコール度数の高いウイスキーなので今回は一種類だけのシルバーツアーにした。ディズニーのアトラクションのような樽を模った電動カートに揺られ、スコッチウイスキーの歴史を辿る。オーディオガイドは二〇の言語に対応していることからも、このツアーの人気の高さが窺われる。
 「樽カートの旅」を終えると次は半円型スクリーンを備えたシアターへ。スコットランドの風景ともに、地域ごとの蒸溜所が紹介される。山や川、滝、湖といった景色が目まぐるしくクローズアップされ、美しさに心を奪われる。大自然に育まれる豊かな味わい。ハイランド、スペイサイド、アイラ、ローランドなど、地域によりそのテイストは少しづつ変わる。また、三年、一二年、二五年と樽の中での熟成期間によって透明に近い液体が、琥珀色に変わっていく様が一目でわかる展示も興味深かった。
 圧巻だったのは聞きしに勝る膨大なウイスキーのコレクション。実に三五〇〇以上のボトルが黄金色の光りを放ち、ところ狭しと並ぶ光景に目が眩んだ。最後はダイニングルームで、ウイスキーを試飲。やはり一種類のコースでよかった。ひと口で喉元がカーッとなる。昔の人はこれをグイと飲んで英気を養い戦いに出ていたのだろうか。
 このツアーではウイスキーはもとより蒸溜技術の歴史も学ぶ。蒸溜の痕跡は紀元前八〇〇年にさかのぼれるそうで、六世紀には英国へ蒸溜の技術が伝わり発達する。それが今では二〇〇カ国以上で販売されているスコッチウイスキーへとつながっていったのだ。
 ショップのウイスキーは一〇ポンド程度の安いものもあれば、スペイサイドのシングルモルト『グレンフィディック五〇年』の二万五五〇〇ポンドとさまざまだ。お土産に持ち帰れない人は、館内のウイスキーバー「アンバー」で飲んで帰るもよし、併設のレストラン近海の魚介類を使った「スコッチタパス」に舌鼓をうって一杯やるのもよしである。
(あおきたかこ・ニューヨーク在住)
2018年特別号下掲載

月刊 酒文化2018年10月号掲載