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「ジョイ オブ サケ」 日本酒を味わい尽くす

 9月27日、全米最大の日本酒イベント「ジョイ オブ サケ(The Joy of Sake)」がニューヨークで開催された。2001年ホノルルでスタートしたこの祭典は、ニューヨークでもおこなわれるようになって12回目を迎える。
 400種近くの日本酒に加えて、ニューヨークで高級和食を提供する16のレストランが一堂に会するのだからたまらない。一夜で日本酒を味わい尽くし、贅を極めた和の食材に舌鼓をうつ。入場料が$110でも、ふだん米国で味わうことのできない銘柄もあり、日本酒愛好家には至福の機会だ。
 アメリカのリカーショップにはワインやウイスキー、ビールと並んで「サケ」コーナーがある。アメリカでもそれほど飲まれているのだろうかと半信半疑だったが、この会場に来てみれば、人気の高さを実感できる。入口でパンフレットと試飲用の小さいカップを受け取り中に入る。純米酒、大吟醸AとB、吟醸の4テーブルが用意され、たくさんのお酒が一列に並んでいる。瓶の前のカップに注がれたお酒を、スポイトで自分のプラカップに移して試す。すべてのサンプルを好きなだけ味わうことができる!そう思うとウキウキした気分にもなってくる。
 さっそく大吟醸のコーナーへ近寄り、学校の理科授業以来となるスポイトを手に取ってみた。あまり取り過ぎずに数滴ほど垂らしてからゆっくりと含んだ。フルーティーなアロマが口の中に広がる。こんな日本酒があるとは知らなかった。まるで女性のためワインのような、香ばしくさわやかな飲み口だ。実は私はこれまでほとんど日本酒を飲んでいない。独特の刺激と香りが苦手で、大学時代のコンパで飲むものももっぱらウイスキーかビールだった。だが「日本酒=男の酒」というイメージはあっさり崩れ去った。辺りを見れば男性ばかりでなく女性も多い。カップルや会社仲間、友人と連れだって来ているようだ。そもそもこのイベントの来場者には偏りがない。男性、女性、そして白人だけでなくラテン系にアフリカ系、アジア系。アメリカでは21歳を超えていないとお酒は飲めないが、若年から高齢者まで様々な年齢層が一堂に会している。
 バーでお酒を飲む感覚で来ている若者グループもいれば、熟年カップルが切子のグラスを持参して仲良く味わう姿もある。ひとつひとつ丁寧に吟味しては、細かくメモをつける方もいて過ごし方も様々だ。
 会場を取り囲むように配置されたフードブースも大賑わい。口の中でとろけるウニやイクラにハマチやマグロのお刺身。出汁の効いた茶碗蒸しにふかふかのシュウマイ。どれも日本酒と一緒に味わいたい一品である。特に「えん」が提供する宮崎牛は、ステーキが大好きなアメリカ人には大人気だ。長蛇の列が途切れることがない。
 一夜限りのイベントではあるが、年々来場者は増え続けるだろう。それだけの魅力がある。リカーショップの「サケ」の売上にも貢献するに違いない。
(あおきたかこ・ニューヨーク在住)
2018年冬号掲載

月刊 酒文化2017年12月号掲載