えーくらいもん会 東京で熊本の酒を応援する

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日本酒の後進地だった熊本は、明治期に技術者を招聘して科学的なアプローチで酒づくりを革新、吟醸酒づくりで一躍、日本のトップに躍り出ました。今も吟醸酒用の酵母として用いられる9号酵母は、熊本で分離されたものです。そんな誉れ高い銘酒産地が、地震で苦境に立たされました。困難を乗り越えて前に進む、熊本の酒造業の今をお伝えします。

森田真衣さんは熊本に足を運び、酒蔵の被害の様子を見て、応援したいと思ったそう。声をあげてみると、賛同する声がたくさんあがってうれしかったと

震災から2カ月余りたった6月19日。東京の神保町で「えーくらいもん会」が開催されました。「えーくらいもん」とは熊本の方言で酔っぱらいという意味。発起人は初代ミス日本酒の森田真衣さんです。彼女の「熊本の酒を応援しよう!」という呼びかけに、なんと70人もの日本酒ファンが集まりました。

熊本からは蔵元4社が駆けつけました。前日に池袋で開催された日本酒フェアに参加するために上京され、そのまま居残ってこのイベントに顔を出してくれたのです。ひとりずつ被災状況を報告し、県内外の日本酒ファンや同業者からの支援に感謝を述べました。

■吉村謙太郎さん(瑞鷹株式会社)
「台風・火災・水害は保険に入っていたのに、地震だけは入っていなかったんです(苦笑)。古い土蔵の蔵は壁や屋根が落ちて、ひどいところは柱と梁だけの丸裸。タンクが台座から落ちて琺瑯が割れたり、天井から異物が大量に落ちて醪に入ってしまったり、廃棄せざるをえなかった醪が数本でました。
たくさんの方々にお手伝いいただいて、瓦礫を片付け、雨漏りを修理し、2か月かって残った建物に仮設の瓶詰ラインを据え付けたところです。
震災では出逢いが次々にありました。ボランティアの方々、地元の宮大工さんとそのお仲間、県人会、県内外の同業者、得意先や取引先など、もう頭が下がりっぱなしです。ようやく出荷を再開できるようになったので、恩返しの意味でも張り切ってやっていきます」

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●瑞鷹株式会社(川尻本蔵)
熊本市南区川尻四丁目6番67号
TEL 096-357-9671 http://www.zuiyo.co.jp/

■山村弥太郎さん(山村酒造合名会社)
「地震では蔵の壁が落ちたり、煙突が折れたり、商品の破損もありましたが、軽微なほうです。まだ発酵中の醪が6本あったので、困ったのは4~5日電気が止まって醪の温度をコントロールできないことでした。ふつうでは絶対にやりませんが、実験だと思ってすべて常温でやってみると、米がよく溶けて粕が出ないくらいで仕上がりました」

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●山村酒造合名会社
熊本県阿蘇郡高森町高森1645
TEL0967-62-0001
http://shop.reizan.com/

■神田清隆さん(花の香酒造株式会社)
「幸い蔵や設備に大きな被害はなく、電気・ガスも止まりませんでした。それで被害の大きかった熊本市内までタンクで水を運んだのですが、道路はあちこち傷んでいて、ビルの損壊が目立ちました。少し落ち着いてからも自粛ムードが強くて業務用がよくありません。弊社も県内の出荷は前年を大きく割り込んでいます。料飲店の閉店率は4%を超えたという話もあります。それでも皆、前を向いてがんばろうと言っていますので、これからも応援をよろしくお願いします」

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●花の香酒造株式会社
熊本県玉名郡和水町西吉地2226-2
TEL:0968-34-2055
http://www.hananoka.co.jp/

■河津宏昭さん(河津酒造株式会社)
「当社は比較的新しい蔵で昭和7年の創業、本当に小さな規模でやっています。大きな被害はありませんでしたが、全壊してしまった阿蘇神社や石垣が崩れ落ちた熊本城などを見ると、これからどうするのか、修理にいくらかかるのか、元に戻らないのではないかなど、地震保険は半分しか補償しないという話も聞きますし、不安を感じます。
と言っても自分にできることは、おいしい酒をつくって喜んでいただくことです。うちの酒は甘口に仕上げています。甘口の酒をおいしいと思ったからなのですが、ぜひ、試してみてください」

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●河津酒造株式会社
熊本県阿蘇郡小国町宮原1734-2
TEL0967-46-2311
http://kawazu-syuzou.com/



蔵元の近況報告が終わると、後半は蔵元を囲んで渾身の一本を飲み比べます。
『香露』『花の香』『瑞鷹』『通潤』『れいざん』『萬坊』『花雪』の7銘柄が準備され、持参したマイ猪口で楽しみました。手にした器は、上品な小さな猪口、こだわりのぐい飲み、大きな茶碗とさまざま。おつまみはからし蓮根やさつま揚げ、阿蘇のたまり漬けなどの郷土料理です。
ふだん日本酒を飲まないという方や、熊本の酒を飲むのは初めてという方もいらっしゃり、日本酒ファンばかりが集まるイベントとはちょっと違った初々しい雰囲気の楽しいパーティとなりました。


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2016年08月06日