自然な農法の米にこだわる瑞鷹 注目は『崇薫』と『菜々』

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 日本酒の後進地だった熊本は、明治期に技術者を招聘して科学的なアプローチで酒づくりを革新、吟醸酒づくりで一躍、日本のトップに躍り出ました。今も吟醸酒用の酵母として用いられる9号酵母は、熊本で分離されたものです。そんな誉れ高い銘酒産地が、地震で苦境に立たされました。困難を乗り越えて前に進む、熊本の酒造業の今をお伝えします。

復旧作業の陣頭指揮をとる吉村謙太郎常務。この機会に断舎離して、将来を見据えた工場・設備にリデザイン構想を練っていると前向きだった。

 熊本市南部の川尻地区にある酒蔵 瑞鷹(ずいよう)は、清酒と赤酒(熊本の伝統酒。味醂のような甘い酒で料理用にも広く用いられている)、そして焼酎を製造しています。明治期に創業し、熊本の酒の品質向上のために酒造研究所を設立し、技術者を招聘するなど、長く熊本の酒造業を牽引してきました。
 近年、同社が清酒づくりで強い関心を寄せているのが原料となる米の栽培です。新たに発売した次の2つの商品は、自然農法や除草剤を使わない特別栽培した米でつくったもの。品種は熊本県が開発した清酒専用の「吟のさと」です。酒の大元である米がしっかりしていなければ酒もいいものにならないと考えたのでしょう。熊本の酒を飲んで応援と思ったなら、まず試すべきはこの2つです。

maker02_item01.jpg●崇薫(すうくん)
http://www.zuiyo.co.jp/news/598/
 環境保全型農業技術研究会のご協力により、除草にはジャンボタニシを使い、農薬・化学肥料は一切使用しない自然農法栽培で生産した酒米「吟のさと」を使用。阿蘇の伏流水で仕込んだ地産の素材と質にこだわった純米吟醸酒。

maker02_item02.jpg●純米酒 菜々(さいさい)
http://www.zuiyo.co.jp/news/1497/
 お米の味が活きた柔らかな甘さの中に、さわやかな酸味を感じるスッキリとした味わいが特徴。熊本県八代市鏡町の菜の花畑で、「菜の花栽培」という除草剤を一切使用しない特別栽培で生産された酒米「吟のさと」を100%使用した、地産の素材と質にこだわる純米酒。


maker02_item03.jpgそして、熊本オリジナル、伝統の赤酒がこちら。
●東肥赤酒http://www.akazake.com/
 うま味が豊富で上品な甘みと独特の風味のある赤酒は、数々の和食の名店で欠かせない料理酒として使われています。ご自宅で味醂のかわりに試してみてください。
  さて、今回の地震では同社では、古い土蔵の本社屋と工場の壁・屋根が落ちるなど、大きな被害がありました。最初の地震で破損した商品を動ける社員が総出で片付け、次の出荷準備を整えたのが15日金曜日です。16日未明、そこに震度7の本震が襲い、再び商品の大部分が破損、土蔵の工場の壁と屋根は崩落し、柱と梁だけになって歪みました。タンクが傾いたり、発酵途中だったタンクに屋根からの土砂が入いったりして、数本分を破棄せざるを得ませんでした。

 常務の吉村謙太郎さんは次のように話してくれました。
「台風・火災・水害は保険に入っていたのに、地震だけは入っていなかったんです(苦笑)。建物や製品の被害はたいへん大きかったのですが、ありがたいことに東北の地震を経験した蔵元の仲間からすぐに連絡があり、いろいろなアドバイスをもらって、本当に勇気づけられました。たくさんの人に手伝っていただいて、瓦礫を片付け、雨漏りを修理し、残った建物に仮設の瓶詰ラインを据え付けて、出荷を再開するまでに2か月かかりました。この間、『赤酒はいつ出荷できるのですか、赤酒が無いとうちの味ができません』というお問い合わせをたくさん頂戴して、無くてはならない商品なのだという思いを強くしました。
 震災では出逢いと再会が次々ありました。ボランティアがたくさん来てくれましたし、地元の宮大工さんが仲間と駆けつけてくれて専門でないとできないところを手当てしてくれました。県人会、同業者、お得意先やお取引先など、もう頭が下がりっぱなしです。」

 熊本には、地元のものよりも県外のものをありがたがる気質があると言います。ですが今回の震災で地元のものへ率先して利用するように、雰囲気が変わってきたようです。熊本の酒も地元での評価がさらに高まりそうです。

●瑞鷹株式会社(川尻本蔵)
熊本市南区川尻四丁目6番67号
TEL 096-357-9671 http://www.zuiyo.co.jp/

本社屋は壁が落ちてまだ使えなかった(6/14)。建物の損傷だけでなく、コンピューター関係の復旧に時間がかかり、業務に支障をきたしたという。
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昭和37年に竣工した鉄筋の本蔵。四季醸造蔵(一年中酒づくりができる当時の最新鋭工場)で、今度の地震ではびくともしなかった。
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本蔵にもたれるように傾いた土蔵蔵。酒の貯蔵蔵として使っていた古い蔵は屋根と壁が落ちた。どのように修復するのか検討中。
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本蔵に隣接する精米工場は大きな瓦屋根が落ちた。地元の宮大工とその仲間が駆けつけて、屋根に上りブルーシートをかけるなどの応急処置。
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赤酒と焼酎をつくっていた東肥蔵も損傷が大きく、残った建物に設備を移動して瓶詰工場に。
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例年以上にピカピカに磨き上げたというタンクが並ぶ。次の酒づくりまで出番を待つ
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東肥蔵には大正期に建造された土蔵蔵を現役で使っていたが、震災で大きな被害があった。
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2016年08月13日