熊本の奥座敷 山鹿温泉にうまい酒あり『千代の園』 千代の園酒造

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日本酒の後進地だった熊本は、明治期に技術者を招聘して科学的なアプローチで酒づくりを革新、吟醸酒づくりで一躍、日本のトップに躍り出ました。今も吟醸酒用の酵母として用いられる9号酵母は、熊本で分離されたものです。そんな誉れ高い銘酒産地が、地震で苦境に立たされました。困難を乗り越えて前に進む、熊本の酒造業の今をお伝えします。

 山鹿市は熊本市から車で1時間ほど。熊本と小倉を結ぶ豊前街道の宿場町として栄えましたが、そばを流れる菊池川を利用した米の集散地でもありました。町のあちこちから良質な温泉が湧き、今でも気楽にひと風呂浴びられる立ち寄り湯が7か所もあります。その筆頭はさくら湯。明治期初期に大改装されて以来、市民温泉として親しまれてきた建物を忠実に再現しています。風情といい泉質といい申し分なく、しかも、うれしいことに入湯料は大人が300円とリーズナブルです。
 ひと風呂浴びて、昭和が色濃く残る商店街を菊池川の方に歩いていくと、そびえたつ千代の園酒造の煉瓦の煙突が見えてきます。この下町惣門界隈は昔から酒屋や米屋や味噌屋が集まっていて、趣のある木造の古い商家の街並みが残っています。200mほどの通りを酒蔵や味噌蔵を見学しながら1時間かけて歩く「米米惣門ツアー」はお土産がついて500円とお買い得です。どうぞ参加してみてください(前日までに要予約)。
WEBサイト

maker04_00.jpg  さて、今回目指すのは千代の園酒造です。代表銘柄は『千代の園』ですが、名声をとどろかせたのは、普通酒全盛の昭和43年(1968年)に全国の酒蔵にさきがけて発売した『純米酒を 朱盃』です。祝いの席で蔵人が朱色の大盃でまわし飲みをしたことから命名したのだそうです。
●朱盃

maker04_00.jpg  そしてもう一つ忘れられないのが『熊本神力』です。これは千代の園酒造を創業した本田喜久八氏が明治期に開発した米の品種で、優れた酒造適性があると再注目されています。この米をそのまま酒銘にいただいた『熊本神力』は吟醸酒と純米吟醸酒をラインナップしています。
●熊本神力

 震災では千代の園酒造にも被害がありました。土蔵の壁が落ち、シンボルの煙突にひびが入ったのです。煙突は昭和初期に建てられたもので、米を蒸す時の排熱に使っていましたが、ボイラの入れ替えとともに修理が必要だそうです。
 今の課題は山鹿温泉の観光の復活です。地震直後のゴールデンウィークは宿泊予約がほとんどキャンセルになり、その後もなかなか客足が戻っていません。熊本市内の料飲店も自粛気味で宴会が少なく、酒の消費はに鈍いままです。
 ぜひ、山鹿のお店から千代の園のお酒を取り寄せて応援してください。近くで見かけたら手に取ってみてください。そして、どうぞ山鹿温泉にお出かけください。

「米米惣門ツアーは楽しいです。どうぞ山鹿におこしください」と本田雅晴社長。
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千代の園酒造の前の通りは、米屋や味噌屋など昔ながらの古い商家が並ぶ。
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本田社長の住まいでもある千代の園酒造の本社屋。大きな被害はなかったものの、余震が続いたため大事をとって車中泊されたそう。
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酒蔵の土壁が落ち、シンボルの煙突にひびが入った。
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●千代の園酒造株式会社
熊本県山鹿市山鹿1782
TEL0968-43-2161
http://www.chiyonosono.co.jp/
2016年08月26日