町全体でおもてなし　黒川温泉　旅館わかば

川沿いに温泉宿が立ち並ぶ黒川温泉。手ごろな広さと落ち着いた街並みが心地よい。

　黒川温泉は、熊本、いや九州を代表する温泉地です。ゆっくり歩いて15分ほどの範囲に温泉旅館が点在しているのですが、こげ茶を基調にした落ち着いた色彩で街並みが整えられていて、町の喧騒を離れたゆっくりした気分に浸れます。
　気持ちがいいのは景観が統制されていることだけが理由ではないようです。通りに面した旅館や施設の植栽の手入れがどこも行き届いていて、おもてなしの気持ちが伝わってきます。また、温泉地は限られた源泉を共同で利用していることが多いのですが、ここは宿がそれぞれ源泉をもっているのだとか。宿によって泉質が変わり、澄んだ湯の宿、濁った湯の宿と様々だそうです。
　お世話になったのは旅館わかばさん。一方通行で入ってくる温泉地の一番奥の方にありました。川を見下ろす露天風呂はほどよい湯加減、柔らかい肌触りの優しい湯です。浴槽の一部が寝湯になっていて、浸かっているとウトウトと眠くなってきます。
　ひと風呂浴びて、さあ、お楽しみのお食事は熊本の食材に料理長が腕を振るった料理が、いいタイミングで出てきました。お造り、焼き物、椀物、揚げ物などなど、おいしい上にボリュームたっぷりで大満足。地元の河津酒造の『蓬莱』と堪能しました。
　震災では被害はいろいろあったようですが、宿泊していたお客様やスタッフには一人のけが人もなかったのが幸いでした。ライフラインも途切れることなく、困ることはありませんでしたが、交通網がマヒして直後の予約はすべてキャンセル、ゴールデンウィークも客足が戻らず、温泉街がこのまま沈んでいってしまうのではないかと不安がよぎったと言います。
　でも、今は見事に復活、大勢の観光客でにぎわっています。黒川温泉は一年を通じて、四季折々の表情が楽しめる温泉リゾートです。この秋冬もぜひお出かけください。

＊2016年9月2日取材

旅館わかば。少し奥まった玄関までのアプローチを進むにつれて、寛いだ気分に切り替わる。

オシャレなショップや休憩どころがあちこちにあって、街歩きが楽しい。

おいしいお料理は大満足すること間違いなし。

『蓬莱』は隣町の小国町の河津酒造がつくる。