リキュール工房でびっくり体験

050531_2.jpgジェニパーベリー、キャラウェイ、コリアンダー、カルダモン、リコリス、オレンジピール……。ジンやキュラソーに使われるさまざなハーブである。原料の貯蔵庫には、これらの強烈な香りが充満していて、居るだけで身体が健康になっていくような気分だった。
ここは大阪港に近いサントリー大阪工場にあるリキュール工房。今年の2月に竣工したできたてほやほやの施設である。原料・製法・商品化のプロセスなど、名前のとおりリキュールづくりのすべてがわかる、日本で初めてのものだ。

リキュールは日本人が最も知らない酒のひとつであろう。「リキュールって、梅酒とかよね。お酒に果実を漬けたものでしょう」と答えられれば上等で、ほとんどは「??? たしか缶のチューハイにリキュールって書いてあったかな?」「ウッソー、ぜんぜん気がつかなかったわ」というところ。
缶入りのチューハイやカクテルは、「アルコールに果汁と炭酸を加えて、甘味等で味を調えて詰めただけ」だと思われている。たしかに、家庭や居酒屋ではそうやってつくる。だが、フレッシュな味わいのままにパッケージするのは簡単ではない。果実やハーブあるいはナッツから香味成分やエキス分を狙って抽出する、高度なリキュールづくりの技術があって初めて可能になるのだ。
工房には銅製のポットスティルやジン用の背の高いタイプ、焼酎でよく使われているステンレス製の減圧蒸留器など、タイプの異なる4つの蒸溜器があった。また、酒に果実やハーブを漬け込む底部に大きな吐き出し口がついたタンクがあった。香味成分やエキスの抽出は、酒にハーブを加えて蒸留によりアルコールとともに取り出す方法や、梅酒のように酒に素材を漬けてエキスを抽出する方法がよく使われ、求めるモノによって使い分けられたり、組み合わされたりする。
リキュールの本場は欧州。ベネディクティンやシャルトリューズなど修道院でつくられてきた伝統的な薬酒タイプ、クレームドカシスやパッソアなど果実味の豊かなタイプ、アマレットやカンパリなどナッツやハーブの成分を生かしたタイプなど、その種類は大変豊富である。そして、お気づきのとおり、技術と想像力があれば新しいリキュールはどんどん生み出せる。近年開発された、桜や抹茶やマカのリキュールはその好例であろう。
今ではウイスキーの会社のイメージが強いサントリーだが、もとは薬種問屋「寿屋」として出発し、赤玉ポートワインというリキュールで発展の基礎を固めた。同社でもっとも古い大阪工場にこの工房を置いたことは、原点がリキュールの製造・販売であったことを確認するためでもあったように思う。

2005年05月31日 16:05