桶がスゴイ! 「桶を考えるシンポ 桶 OKE OK」開催

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「私は台風娘と呼ばれているのですが、『日本では風が吹けば桶屋が儲かる!』と言います。桶は日本の伝統文化。この会は、そのすばらしい文化を再興させるためのもの。がんばりますので応援してください!」と、桶仕込み保存会のセーラ・マリ・カミングス女史(株式会社桝一市村酒造場 取締役)は気勢をあげた。4月8日に六本木ヒルズでおこなわれた「桶を考えるシンポ 桶 OKE OK」でのことだ。

発酵食品の豊かさは日本の食文化の特長。味噌、酒、酢、醤油、漬物、寿司、納豆などはみな発酵食品だ。歴史的にそれらの製造には、杉板を組み合わせて作る桶が大きな役割を果たしてきた。室町期に大桶が開発されると、それは益々顕著になって行く。

けれども、発酵食品を安定的かつ効率的につくることを優先したとき、雑菌が繁殖しやすい桶は急速に廃れる。清酒製造の現場は、戦後、あっという間に大桶はホーロータンクに変わり、今ではコンピューター制御のステンレスタンクが珍しくない。

たしかに飲みやすいきれいな酒ができるようになった。しかし、木桶だからこそ生まれた複雑な味わいや趣のある酒蔵の風景は失われ、大桶を作ったりメンテナンスしたりできる職人は激減。大桶作りの裾野となっていた林業、竹林、製桶業も精彩を欠くようになり、大桶による発酵食品づくりの文化は維持することすら難しくなってしまった。

かつてウイスキーやワインでも同じような変化が見られた。しかし、木桶で仕込むからこそ生まれる複雑な味わいの豊かさに気づいた人々は、次々にステンレスタンクを木桶に戻したり、併用したりするようになる。サントリーは随分前にウイスキーづくりに木桶の仕込槽を復活させ、ボルドーやブルゴーニュでのワインづくりでも木桶への回帰が見られたという。


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このイベントには、趣旨に賛同した小泉純一郎首相や映画監督の宮崎駿氏など、各界のメッセージが寄せられた。それらは大桶を構成する36枚の杉板に表現され、会場に展示された。木桶で仕込む酒の旨さが、人々を魅了する日が来ることを願ってやまない。

2006年04月10日 21:59