木桶仕込みで原点に帰る

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 NPO法人桶仕込み保存会(代表:セーラ・マリ・カミングス)は、昨年末に東京で、木桶の再評価を促すイベント「いまさらおけを考える会『桶の底力〜そこにこそ〜』」を開催した。このタイトルは「桶はふだん見えない『底板』が非常に重要な役割を担っている。底板が日本の醗酵文化を支えてきた」というメッセージをこめたもの。会は、小泉武夫氏(東京農業大学教授)の基調講演でスタートし、全国から集まった桶職人や桶を利用した醗酵食品メーカーによるパネルディスカッション、桶仕込みのお酒と食品を味わう試食パーティへと進む構成で、桶づくりの実演もおこなわれた。

写真:全国から集まった桶職人の方々

 パネルディスカッションでは木桶仕込みに取組むメーカーを代表して酒井酒造株式会社(山口県岩国市)が登壇、酒井佑社長と製造部桶担当の片山優一さんが桶にチャレンジした経緯と豊富を語った。酒井酒造が木桶仕込みを復活させたのは、二年前に開催されたこのイベントに偶然参加したことがきっかけ。酒井社長は、管理しきれない木桶での酒づくりに現状を打破する可能性を感じ、帰社すると即座に木桶を発注したという。木桶のメンテナンスと酒づくりに直接関わっている片山氏は「難しくたいへんだが、いろいろな発見があって毎日が楽しい」と語る。
 木桶仕込みは2000年の復活から9年目を迎えた。参加する蔵元は年々増加し、今では50社を超える。味噌や漬物など他の業界で木桶にこだわっているメーカーとの連携も広がりを見せている。
これからはパネルディスカッションで茂木健一郎氏(脳科学者)が指摘したように、伝統的なイメージの心地よさに止まらず、木桶が醗酵にどのように作用しているのかを科学的に明らかにすることが課題だろう。

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木桶での酒づくりのおもしろさを話す片山優一さん(酒井酒造)
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桶づくりの実演が始まるとアッという間に人だかりができた

2009年02月09日 22:12