幻の酒、「きじ酒」を飲む

090902_01.jpg作家の本間千枝子さんと日本名門酒会を主宰する酒問屋「岡永」の飯田社長からのお誘いで、貴重なきじ酒を食してきた。きじ酒は、平安時代から宮中に伝わる高貴な方々が飲むありがたいお酒であると知識としては知っていたが、飲んだことはもちろんなかった。今回は、愛媛県鬼北町の特産品であるきじを使い、同じく愛媛県の梅錦山川で醸されたきじ酒の試飲ときじ肉料理の試食が「東京きじ酒の会」(会長:本間千枝子)主催で行われた。

写真:きじのおいしさを説明する本間千枝子さん(右から3人目)

ところで、きじ酒の作り方をご存知でしょうか。伝統的な製法は本間千枝子さんの本(『父のいる食卓』文芸春秋社刊)に出てくるように、きじ肉のささみに微量の塩をつけてから炭火であぶり、熱めの燗酒に浸してしばし待てば出来上がりというものだ。ふぐひれ酒などと同じ原理であるが、肉そのものを使うというところが珍しい。本間さんは子供のころに父親のお相伴でいただきとてもおいしかったと語っている。一方で、鬼北町は町をあげて特産品のきじの飼育に力をいれており、稀少なきじ肉の市場育成に取り組んでいる。きじ肉には、イノシン酸など18種類ものアミノ酸が含まれているので、熟成させるとよりうまみが増すという特質がある。町では「鬼北きじ工房」という第3セクターを設立し、特殊な冷凍保存技術を使った「鬼北熟成雉」の商品化に成功している。この会社が開発したきじエキスを使って今回のきじ酒が造られた。

さて、かんじんのきじ酒を飲んでの感想はというと、予想外にさっぱりとしたものであった。梅錦山川の日本酒とブレンドしてから半年熟成させたものと製造したばかりのものと二種類を試したが、半年熟成したものの方が、旨味が多く味わいが深かった。きじは肉だけでなく、エキスも熟成させた方が深くなるようである。

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一品目のきじ酒ときじ胸肉の紅味噌ずけ

写真撮影:Toshiya鈴木

2009年09月02日 18:49