4割は国産米を使った酒を好んで選ぶ

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 米トレサビリティ法の施行にともない、酒類の原料に使う米の産地国の表示が義務づけられた。対象になるのは日本酒と本格焼酎、みりんの3種類。7月1日以降に仕入れた米で製造した商品から表示義務が発生し、在庫がなくなり次第切り替わっていく。この機会に、酒に関心の高い弊社のモニターに、酒類の原料米の産地表示についてのアンケートをおこなったところ、「国産米を使った酒を好んで選ぶ」と回答した人は42%にのぼった。食品のトレサビリティの強化は、酒類の選択に少なからぬ影響を与えそうだ。

 アンケートでは原料米の産地国を表示することは、「いいことだと思う(「とてもいいことだと思う」と「いいことだと思う」の計)が9割近くにのぼっており、酒の原材料の産地表示に飲み手はおおむね肯定的である。
 では、原料米の産地国に関心を向ける人はどれくらいいるのだろうか。「酒の原料米の産地国を気にしますか」という質問では、「とても気にする」13%と「気にする」47%とが合わせて60%にのぼっている。
 原料米の産地国表示が購買に影響を与えるのかを見るために、産地国表示に対する意見を列記して、自身の考えに近いものを選んでもらうと、「国産米を使った酒を好んで選ぶ」が42%だったのに対して、「値段が安ければ外国産の米を使った酒を選ぶ」は13%にとどまった。さらに「産地国だけでなくどの地方産かまで明示できるものを選ぶ」という意見も33%が支持した。その一方で、「安全な米ならば国産でも外国産でも構わない」(26%)や「酒の味がよければ原料米の産地にはこだわらない」(27%)も3割弱あった。
 国産原料の酒を好んで選ぶ理由としては、「国産米の方が安全・安心な気がする」という意見だけでなく、「日本の農家を応援したい」「地酒や日本の酒と言うなら国産の原料を使うべき」という声が目立つ。反対に国産米にこだわらない理由としては、「安全が担保されていればよく、産地国は関係ない」「国産ならばいいという発想がわからない」「現実問題として輸入食品なしには成り立たない。酒も例外ではない」などの意見がある。
 このように、圧倒的多数ではないものの「国産米を使った酒を好んで選ぶ」という傾向が消費者に見られるが、今回の表示変更を機に原料調達が変わりそうなのが芋焼酎だ。大半の芋焼酎は仕込みの一段階で米麹を用いている。多くは外国産米でつくった米麹を使用していたのだが、米トレサビリティ法制定のきっかけとなった事故米の混入があったのが、この芋焼酎の米麹。その後、国産原料米に切り替える動きが見られていたが、ここで一気に進む見通しだ。また、原料への関心の高まりから、米を使わない全量芋の芋焼酎もアピールを強めている。ちなみに、大半の芋焼酎が米麹を使っていることついての認知と、全量芋の焼酎の認知及び飲用経験はどれも4分の1弱にとどまる。
 ところで、この法律の規制範囲は極めて広い。酒類について整理してきたが、対象品目は、餅、団子、せんべい等の米菓などの米を主原料とする加工食品のほか、小売店が加工販売する弁当やおにぎりにも表示が義務づけられる。さらに飲食店やホテル・旅館でもメニューに「国産米使用」などの表示をしなければならない。アンケートでは、適切に運用されないことへの危惧、偽装の防止策の欠如、風評被害の拡大を懸念する声が寄せられたが、規制対象が多岐にわたるこの法律は、「食品の原材料をトレースできるようにする」という主旨から外れないよう、今後の動きを注意深く見守る必要がある。
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2011年07月05日 16:49