次世代に向けて進化するリアル・エール
トレンドは確実にゴールデン・エールである。だがベナー氏のいうとおり、伝統的なダーク・エールを愛する人々も非常に多く、彼らがリアル・エール市場を支える大きな柱となっている。リアル・エールには豊かな多様性、奥行きや広がりがあり、どのグラスも新鮮な驚きや満足感をもたらしてくれる。ダーク、ペール、ゴールデン、いずれもリアル・エールの魅力的なスタイルのひとつであることにかわりはない。
ちなみに、パブに行かずとも気軽に楽しめるボトルド・エール(瓶詰めされたエール)も、近年売上を高めており、今後のリアル・エールの活路のひとつとして重要なポジションを担うものとして注目されている。
また、BBPAはリアル・エールのイメージ・アップを図るため、「ビューティフル・ビール」と呼ばれるキャンペーンを推進中だ。その焦点のひとつがビールと食とのよりよい関係をクローズアップすること。CAMRAも同様に、食卓でのビールの魅力を、出版物やイベントを通して伝えている。
実際、ビールは食事によく合う。特にリアル・エールにはワインを越える芳香や風味のバリエーションがあるとされ、選び方によっては食事にも絶妙に合い、楽しい食卓を演出することができる。
イギリスでは、この20年間で食の世界も国際化・多様化し、これまで以上にスパイシーな料理が普及した。スパイシーな料理とビールがよくマッチするのは、日本人であれば既に経験としてよく知ることだが、料理によってはワインよりビールのほうが相性のよいことに、イギリスの人々も気づき始めているようだ。
近い将来、リアル・エールはダイニングでさらにクローズアップされそうである。これは頭角をあらわしたゴールデン・エールやボトルド・エールの人気の高まりとともに、リアル・エールの新しい生き方を示すひとつといえるだろう。
CAMRAが毎年発行しているガイドブック『Good Beer Guide』の最新版には、昨年より80以上多い醸造所がリストアップされた。それらのほとんどが、税率の低い年間産出量3万バレル以下の醸造所である。こうした個人・家族経営による小規模の醸造所の増加は、リアル・エールが戦後のリバイバルを経て、ピルスナー・ラガーと共存しながらもイギリスにおいて根強く愛され、底力を秘め続けていることを物語る。
(注)カーボネーションとは、醗酵が終了したビールに炭酸ガスを加えること。
| 【プロフィール】 |
| 福嶋美香(ふくしま・みか) |
| 東京生まれ。玉川大学文学部外国語学科卒業。コピーライター、新聞記者を経てフリーランスのジャーナリストとなる。レストランやホテルなどのホスピタリティ・ビジネス関連についての実績多数。現在イギリス在住。 |
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