連続蒸溜の技法を取り入れた単式蒸溜器
蒸溜方法はあえて手間暇のかかる製法を採用していました。カーポヴィッラ蒸溜所のグラッパづくりは、単式蒸溜2回です。
1回目の蒸溜はスチールの篭に入れたヴィナッチャを、蒸溜器(カルダイア)の内釜の中にセットして、外釜との間に熱湯を流し込み、湯煎で蒸溜します(図表3)。低い温度で間接的にゆっくり熱を与える仕組みです。かつての直火による加熱でも、今日では一般的なスチームによる加熱でもなく、彼はこの手法が一番だと言います。初溜液は最初に流れ出る部分と、最後の部分をカットして採取され、十分な量が貯まったところで2度目の蒸溜が始まります。
2度目の蒸溜は、のぞき窓が7つある背の高い蒸溜器(リパッソ用カルダイア)でおこなわれます(図表5)。窓のあるところに棚板(ピアット)が設けられていて、各段階で不純物が取り除かれ、上に行くほど純粋なアルコールに近づきます。単式蒸溜器ですが、連続式蒸溜機の要素を取り入れた構造です。蒸溜器の表面はステンレスですが、中は銅製で蒸溜液と銅が触れ合って化学変化をおこさせるのは、ウイスキーに通じます。

リパッソ用カルダイアがこのように複雑な構造になっているのは、ヴィナッチャが種子や果皮を含み、さまざまな成分を持っているからでしょう。これは、複雑な味わいの酒になる可能性を秘めていますが、ひとつ間違えると雑味の多い粗悪な酒になってしまうことを意味します。完璧主義者と異名をとり、オーストリアの蒸溜酒コンクールでは市販酒でトップを獲ったヴィットリオは、各ピアットの蒸溜液の溜まり具合を微妙に調整しながら、求める成分だけを巧みに抽出して行きます。ですからアプリコットや洋ナシなど他の果実を蒸溜する時には、この蒸溜器は使いません。素材本来の香味をかえって失わせてしまうからでしょう。
ちなみに酒の収量は、グラッパで、150kgのヴィナッチャからアルコール度数70度弱の原酒が6〜7リットルだそうです。りんごやアプリコットなど他の果実ではもっと少なく、どうしても価格が割高になってしまうと言います。
蒸溜液は、100qも離れたグラッパ山の秘密の湧水で度数を調整され、大小さまざまなステンレスのタンクに詰められ、冷暗所に3〜5年貯蔵されます。 |