当たり年 ぶどうの収穫はじまる サントリー登美の丘ワイナリー

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 夏の日差しをたっぷり浴びてすくすくと育ったブドウが収穫の時を迎えている。甲府盆地を見おろすサントリー登美の丘ワイナリー(山梨県甲斐市)では8月27日に収穫式・仕込式がおこなわれ、今シーズンのワインづくりが始まった。

写真:今年最初の収穫はリースリング・フォルテ種。爽やかな白ワインが待ちどおしい

 「今年は天候に恵まれ、これまでのところブドウは順調に生育し、たいへんいい状態です。昨年以上の当たり年になるかもしれません」と高田清文所長。梅雨の雨量が例年の7割と少なく、7月、8月は猛暑が続き、乾燥した気候を好むブドウにとっては好条件だったそうで、さらに8月下旬に朝夕の気温がぐっと下がったことで、香り豊かなワインが期待できるという。
 いま同ワイナリーでは、シャルドネ種、甲州種、マスカット・ベーリーA種など11品種のブドウが、適地を選んで栽培されている。これから11月末の貴腐ブドウの収穫まで、最適のタイミングで収穫し、スピーディーに仕込まれる。畑の位置や大きさも様々、収穫量も異なるブドウの個性を生かすには、畑ごとに小さなタンクで仕込むのがベストだ。
 今年、1億5千万円かけて小さな仕込みタンクを15基導入したのは、こうした個性豊かなブドウのポテンシャルを最大限に引き出すため。ブドウを傷つけることなく梗から外す日本初導入の除梗機や、果汁を搾ると同時に窒素ガスを充てんして酸化を防ぐプレス機を設備したのも、同じ考え方に立ってのことだ。
 また、今年は赤ワイン用ぶどう品種であるマスカット・ベーリーA種がOIV(国際ブドウ・ワイン機構:International Organisation of Vine and Wine)に品種登録され、海外でもワインにブドウ品種を表示することが可能になった。これで白ワイン用の甲州種とともに、日本独自のぶどう品種が赤白揃って海外に出ていくことができる。
 サントリー登美の丘ワイナリーは、マスカット・ベーリーA種のワインづくりに特に力を注いでいる。このブドウは日本ワインの父といわれる川上善兵衛氏(岩の原葡萄園創業者)が、日本の風土に合うワイン用のブドウを求めて、まさに生涯をかけて生み出した品種である。おいしいワインに仕上げるために、フレンチオークやミズナラの樽で熟成させたり、ブルゴーニュのように梗を取り除かずにブドウを仕込んだりと、さまざまなチャレンジを試みている。こうした試行錯誤のなかから、おいしいだけでなく「日本らしい」と言われるワインが生まれてくるのではないだろうか。楽しみに待ちたい。

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ワイナリーからは甲府盆地が見下ろせる

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今年はてるてる坊主が大活躍。雨が少なく当たり年になりそう

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収穫の無事を祈る収穫式。醸造棟では別途、仕込式が行われた

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豊かに実ったブドウに笑顔がこぼれる櫻井鋼社長
(サントリーワインインターナショナル株式会社)

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ブドウの個性を生かすために導入した小さな仕込タンクを説明する高田清文所長(サントリー登美の丘ワイナリー)。

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さまざまなタイプのマスカット・ベーリーA種のワインをテイスティング、説明する高田所長

2013年09月12日 02:16