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酒がおいしい、ショーが楽しい、雰囲気がいいなど、好みの酒場を選ぶ視点は人それぞれだ。けれども、そんな細かいこととは別の次元でとにかくおもしろいという酒場がある。今回はそんな酒場を3つご紹介しよう。
●氷に囲まれて飲むウォッカ
まずは上海のシンボル、東方明朱広播電視塔の近くにあるレストラン「ザ・ビンジャング・ワン」内の「スノーバー」。カウンターや椅子が氷でできているバーは、時々見かけるけれど大半は期間限定だ。この店はレストランの一角に常設されていて、一年中、氷の世界を体験できる。仕組みは氷温の冷蔵庫に氷を模したカウンターや棚が設えてあるというもので、フードのついた防寒具を着込んで中に入るのはちょっとワクワクする。子供の頃、親に内緒で隠れ家にこもったような気分である。
酒はすべてウォッカ。キンキンに冷えてトロトロになった酒がショットで出される。オーソドックスなプレーンタイプはもちろん、チョコレート、ココナッツ、ハチミツ、オレンジなどのフレーバードウォッカも豊富、その数は130種類以上あるという。
いろいろ試してみたいとは思うものの、帯店時間は20分がいいところか。入店してしばらくは皆ワイワイと騒ぐのだけれど、だんだんと体が冷えてきて、ウォッカを放り込んでいるのに、酔った気がしないのである。この辺りが引き上げ時で、食事の前後の話題づくりに丁度いいバーだ。
●熱帯魚を眺めながらサケティーニ
水を眺めたり、ゆらゆらと泳ぐ魚に見入ったりするのは心地よいもの。外灘にあるアクアリウム・バーに入ると、壁にはめ込まれた巨大な水槽が目に飛び込んできた。照明を落とした店内に青白く光る水槽が浮かび上がって、深海にいるような気分になる。表に視線を移せば、広がるのは対岸にそびえる高層ビル群の夜景。極寒のスノーバーでウォッカを2〜3杯引っ掛けてからやってきたのだったが、スノーバーのおもちゃ箱のようなおもしろさとは対照的で、静かに寛げてほっとする。
メニューにはウイスキーやカクテルが充実、マッカランやボウモアなどのシングルモルトのビッグブランドは複数のエイジングが並び、ブレンデッドウイスキーはバランタイン、ジョニー黒、響などプレミアムクラスが揃う。ローヤルやオールドもメニューにあって、やっぱりサントリーの店だなあと納得。
以外だったのは棚に日本酒が並んでいたこと、大関辛丹波、八海山などのボトルが置かれ、カクテル欄にはサケティーニ(日本酒ベースでつくるマティーニ)があった。まさか、ここ上海で日本酒のカクテルが飲めるとは思ってもいなかったが、チャレンジするしかないだろうとオーダー。しばらくして出てきたのは、本当のマティーニと見まがうばかりにきれいなサケティーニ。カクテルグラスに添えられた一粒のオリーブも輝いて、見るからにうまそうだった。
●ホットなジンジャーコーラはいかが
最後は黄浦江のもっとも近くから外灘の夜景が眺められるバー「アタヌ」だ。水深があり港として栄えた外灘には、早くに灯台がつくられたが、このバーは1907年オランダが建てたという灯台の中にある。それ自体もライトアップされていて、中に入ると1階はカジュアルな酒場、2階は陽気のいい時期はオープンカフェになるテラス席、その上に展望台があって自由に出入りできた。
強風のなか、めげず展望台に登って間近で外灘の夜景を堪能。黄浦江を行き来する船が意外と近くに見える。川の流れにしばし見とれていたら、ハックション!とくしゃみが。体が冷えてしまったようだ。風邪をひく前にと、急いでバーに下りる。
寒さで鼻でも赤くなっていたのだろうか、注文をとりに来たウエイターが「ジンジャーコークはどうだ。温まるぞ」と奨める。とりあえずそれをもらうと、出てきたのは根生姜を入れて、温めたコーラである。もちろんノーアルコールだ。ふうふうと息を吹きかけ冷ましながらひと口。思ったよりもいける。コーラの甘さと生姜の風味は、とろみこそないものの生姜湯のような感じだ。
上海にはBGMが会話を邪魔することもなく、気どらずに飲めるバーは珍しい。アタヌはそうした貴重なバーのひとつだ。
(文・写真 酒文化研究所 山田聡昭)
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