器でお酒をおいしく・楽しく・おもしろく

photo041109.jpg「日本酒のおいしさは、相性のよい料理と組み合わせるとグンと増し、味わいを引き立てる酒器で、さらに増します」。日本最古の酒蔵である岡田家酒蔵建造330周年を記念して、小西酒造(酒名:白雪 伊丹市)が一一月一二日に催した食事会「亭主と語る酒と料理と器」は、こう問いかけていた。

岡田家酒蔵は延宝二年(一六七四年)には建てられていた酒蔵で、建造時期が明らかなものとしては最も古い。早くから酒の町として発達した伊丹のシンボルのひとつである。伊丹の酒は、江戸時代の初めに「伊丹諸白」という独自の製法で高い評価を得ていた。江戸で人気の酒は灘酒だったというが、それは江戸も後期の話。その前に伊丹・池田の酒が市場を席巻していたのだ。

今回のイベントは酒をテーマに活性化を図ろうとしている伊丹市の動きに応えて、小西酒造が実施したもの。小西新太郎社長が自ら料理に合わせて酒を選び、酒器にも工夫を凝らした食事会である。最初にアペリティフ(食前酒)として用意されたのは、同社の最高級の吟醸酒を6年間低温で貯蔵した一品。これを軽く冷やしてガラスの酒器で一杯。そのあと、先付けでは、へしこ(鯖の糠漬け)、身欠きにしんなどの保存性の高い魚介類の珍味。これらにはコクのある純米酒を合わせる。燗酒も用意され、湯煎で丁寧につけて猪口で提供される。小西社長いわく、「最近は大きめのぐい飲みばかりで猪口が使われなくなってしまったのが寂しい。小さな猪口で飲むと燗酒の味わいがグンと引き立ちます。ぜひ、お試しください」と。

伊丹市では3年前から酒器と杯台のコンテストを開催している。世界中のアーティストや工芸家から応募があり、なかなかの盛況ぶりだ。杯台は食卓で酒器を置く台のこと。あまり耳慣れないが、酒が特別なものであった時代、あるいは酒を特別に飲む時には欠かせない道具であった。その杯台がまた見直されつつある。和食器をテーブルでコーディネートすると、背が低すぎてガラスのグラスとバランスがとりにくい。杯台を使うことで和酒器はその味わいを生かすことができるからだ。

小西酒造のイベントでは、このコンテストで入賞歴のある作家たちがつくった酒器を自由に選び、それで酒を味わうことができる工夫もあった。日本の酒の節目となった伊丹の地に腰を据え、「日本酒っておもしろいんだよ」と静かに語り始めたように思う。

2004年11月29日 17:13