日本酒と焼酎の印象が強い熊本ですが、最近はワインやドブロクもすごいんです。今回と次回は熊本のニューウェーブをご紹介しましょう。
写真:6月に東京で開催された「日本ワイン祭り」では熊本・大分応援ブースが設けられ、熊本ワインを楽しむことができた。
日本で栽培されたブドウを原料に、日本でつくったワインが「日本ワイン」と表記できるようになったのは昨年のことです。以前から日本ワインを応援し、その発展をずっと見てきたのがワインジャーナリストの石井もと子さん。10年前に日本のワイナリーを訪ねるガイドブック『日本のワイナリーに行こう!』(イカロス・ムック)を発行ときには掲載したワイナリーが82社だったのが、最新の2015年版では186社と2倍以上になりました。
そんな石井さんが昨春開催された日本ワインのセミナーで「今、もっとも注目しているのは九州のワイナリーです。すばらしいシャルドネ種のワインが生まれてきています」とおっしゃり、熊本ワインを紹介しました。温暖な気候で九州の酒と言えば焼酎を連想しがちですが、実はワインもすごいのです。
熊本ワインは熊本市の郊外にあります。食品メーカーが集積する工業団地「フードパル」の一画に瀟洒な建物がひとつ。ここが熊本ワインの醸造所とショップです。ブドウ畑は車で30分ほど離れた山鹿市菊鹿町にあり、数年後にはブドウ畑に隣接した新しいワイナリーを建設する計画もあるのだとか。それはとても楽しみな話で、ワインはブドウ畑を見渡せるワイナリーで飲むと、おいしさが数段アップしますから。
熊本ワインが全国のワインフリークを唸らせたのは『菊鹿シャルドネ』です。ブドウの生産量が限られるため希少品となっていますが、毎年発売されるとすぐに売り切れてしまう人気です。そのほか『マスカットベリーA』や『デラウェア』も日本ワインコンクール2015で入賞するなど、ワインづくりのレベルの高さは折り紙つきです。
震災では瓶詰ラインに歪みが出て修繕が必要になったほか、ワインを詰める前の瓶が2000本も割れたそうですが、建物や商品の被害はほとんどありませんでした。こうした直接的な被害よりも、熊本県内の観光が落ち込んでおり、小売店や料飲店が苦境に立たされていることの影響がじわじわと出てきているそうです。やはり、一時的な義捐金を贈るだけでなく、中長期的な息の長い支援活動が求められています。
熊本ワイン株式会社販売部の荒木さん。
「高級品は好評ですが、一般商品を熊本県内でもっと飲んでいただけるようにしたい」と。
ショップはワインだけでなく地元のチーズやハムなどフードも充実
醸造所の脇にブドウの木が植えられていた。雨除け用のビニールはブドウの実が雨で痛むのを防ぐため。
愛好家から高く評価されている熊本ワインの菊鹿シリーズ。
熊本城本丸御殿ワインは、売上の一部を城の復旧活動に寄付する。