日本伝統酒類市場の開拓に立ちはだかる壁

台湾は、WTO加盟時に酒類の専売制を廃止し、同時に酒類の関税制度などを整えた。現在、穀
物以外を原料とした焼酎の関税は〇%だが、清酒や穀物を原料とする焼酎、泡盛は関税率が四〇%と、ウイスキー、ブランデー、ウォッカなどの〇%、ワインの一〇%などと比べて著しい不利を被っている。
台湾は、大陸地区(中華人民共和国)より早くWTO加盟を実現しようと、各国に対し譲歩を繰り返していた。さらに、メキシコが台湾との交渉議題にいれなかったテキーラは、事後に二〇一三年までの〇%への引き下げで合意した。メキシコ政府の知人によると「大変重要な問題なのに、うっかりしていた」ということらしい。日本の伝統酒類の関税率が高いのは「うっかり」ではない。先ずある国内事情で日本側が議題にしてこなかった経緯がある。
台湾における地酒の普及には、他にも多くの壁を感じる。
台北市内で和食を看板とする料飲店は数あるが、六匯擁の市中心部を路地裏まで隅なく歩いたところでは、地酒を置くのに適した店は八〇軒ほどしかない。しかも間口一間の店が多く、十分な冷蔵スペースがない。中身を入れ替えて偽ることへの疑いから量り売りに警戒がある台湾では、一升瓶でキープする客も多い。
冷蔵スペースはさらに窮屈となり、流通は四合瓶一本からの配送を余儀なくされている。
タイのバンコクには、地酒に適した和食料飲店が約一六〇軒、しかも台北に比べて五〜六倍以上のゆったりした店が多く、台北での市場開拓には大きなハンディを感じざるを得ない。
こうした料飲店での限界を破るには、アンテナショップを軸にした次の展開が欠かせないと思う。ターゲ
ットはホームパーティ需要。
先ず、優良顧客となりうる富裕層をリストアップし、アンテナショップで行う試飲会に勧誘、蔵元関係者などが専門家として地酒の説明をするという仕掛けをつくる。アンテナショップには台湾市場に関心を持つ蔵元が大同団結して参加する。
量り売りも行い、一般客にも試飲を楽しんでもらう。酒器はもちろん粕漬けをはじめとしたつまみ・肴を
売り、郷土料理や郷土文化に関する書籍も販売する。酒を文化として理解してもらい同時に、暖簾、幟、法被や販促商品も揃え、楽しみ空間を演出する。可能なら、観光誘致も視野におきたい。
台北の洋酒業界では、アンテナショップで専門家の説明付きのミニ試飲会を毎週末のように繰り返し開催している。実は、こうしたファンを増やすための戦略・戦術の不足や効率性の差が、地酒の市場開拓の最大の壁となっている気がしてならない。
多くの困難を伴いながらも、(財)交流協会では酒類の関税率引き下げに向けて台湾関係当局との折衝を始めている。地酒の魅力の紹介とファン拡大の努力については、地酒業界の関係者の団結と、一層の奮起に期待したい。

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◆ワインの試飲会の光景(於:易元酒舎)

(うさみよしあき:(財)交流協会台北事務所)

月刊 酒文化2004年07月号掲載