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福光屋 石川

五感を揺らす酒
昨年六月に、同社は銀座五丁目にブティックのような直営店を出店した。この狙いは何だったのだろうか。
「この構想は『鏡花』を造ったときからブランド育成にすごくよいと思って夢としては温めていた。『鏡花』というブランドコンセプトを食器やお香、扇子などに広げたいと考えた。
結局は、福光屋全体のコンセプトショップにしましたが、一階は酒文化のショップです。酒全体の体系を描きたいので、あまり酒ばかり売ってはいけないと常に言っている。酒器とか酒の周辺のものをプロデュースしたい。実際に当社で企画した二万円もする銀の片口が飛ぶように売れる。
そういうお客様は、当然飲む酒も違う。こういうことを理解しないで日本酒は安くしないと売れないという話ばかりしていては駄目だ。酒のある食全体を高めていく。そういうことがわかる人に楽しみを提供すれば、結果的に酒も売れる。二階の金沢料理の店も、ビールを置かないでどこまでやれるかを試している。
いろいろな意味で日本酒の世界の広げ方を試していくのが目的です」
福光社長は伝統的なものを未来につなぐことが好きだという。彼が町作りや学校に関わっている理由を聞くと明快な回答が得られた。
「金沢という伝統のある町だから、町作りにも参画しているのです。
日本酒を二一世紀につなぐことと町作りは同じことと考えています。デザイン学校の理事長を引き受けたこともそうです。アーティスティックなものを育てるのと社員の蔵人を育てることには共通性がある。五感を使う分野が好きだから、人が外からの刺激を受けて何かを感じるということに大変興味がある。
当社がここの井戸水にこだわるのもそうです。ここの水は硬水だけど口辺りが柔らかい。白山に降った雨が一〇〇年かけてようやく当社の井戸でくみ出される。柔らかいけど立体的な水 の味が当社の酒のベースデザインになっている。
酒造りにはこの水の中にある『気』というものが大切だと思っている。迷信のようですが、酒造りをしていると再現性はあるのに、原因がわからないことがたくさんあります。発酵とはそもそも『気』を液体に移す行為なのだと理解しています。サイエンスだけでは自然をコントロールできない。そういう考え方の方がモダンでしょう。『気』と『祈り』そこまでわかった社員の蔵人を造らないと意味がない。理由はわからないが、昔か ら祈れるか祈れないかで、できる酒は全然違ってくるから」

株式会社福光屋
石川県金沢市石引2-8-3
電話 076(224)0985
FAX 076(222)9343
お酒の四季報(2000年夏号)

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