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 長寿と泡盛で有名な沖縄県の食文化は、本土のものとは少し異なります。琉球王国時代の歴史、南国特有の風土、そして、戦後の米軍占領と様々な文化や情報が交流し、そこに沖縄独自のものが形成されているからです。県内には、泡盛の蔵元が全部で48カ所もあり、それぞれが個性や風土を生かし主に地元を中心に飲まれています。
 今回は、そんな沖縄の事情を伝統的な泡盛蔵元、地元ビールメーカー、泡盛以外にもいろいろな酒類を造る総合メーカーなどを駆け足で回ってきたものをご報告いたします。
 また、見るだけではつまらないので、今の沖縄の飲酒シーンを体験すべく、米軍御用達のショットバーから沖縄料理を広めた発祥の店と言われる居酒屋まで、全部で4店ご紹介いたします。


オリオンビール
新鮮なビールを届け、県民に愛されるオリオンビール

オジー自慢のオリオンビール
沖縄といえばオリオンビールである。那覇などの居酒屋では、他のビールの銘柄を置いてはいるが、生ビールはもちろん、ビンでもそれを頼んでいる人を見たことがない。テレビでは沖縄のトップスターであるBEGINを起用したCM「オジー自慢のオリオンビール」などが頻繁に流れている。
沖縄ではビールと言ったらオリオンビールなのだ。最近地ビールの工場がいくつかできているが、規模の大きい工場はオリオンのみ。そのほとんどは県内で飲まれている。この工場のおかげで沖縄県民は、輸送距離も短く新鮮なビールを1年中楽しむことができるのだ。その味はホップが効いていてマイルド、口当たりも良く亜熱帯の沖縄の気候にもマッチしている。県民にこよなく愛されるオリオンビールは沖縄の誇りでもあるのだ。

ヤンバルの玄関口、名護へ
 オリオンビールの工場があるのは名護。ビール工場の見学は、北部観光の観光ルートに組み入れられているほどポピュラーだ。シーズンともなれば、観光バスがどんどんやってくるらしい。そんなオリオンビールを見学するために、われわれも那覇を車で出発した。一行の目的は見学の後の工場で飲む生ビールであることは言うまでもない。
 沖縄自動車道を北上すること1時間、車も少なく快適なドライブで許田インターに。ここは高速道路の終点でもあり、北部観光の玄関口である。一般道に下りると、すぐに道の駅許田がある。工場見学の予約時間にはまだ時間があったので、時間つぶしに寄ることに。「やんばる物産センタ−」の看板が掲げてある。有名なヤンバルクイナのやんばるだ。これよりも北部は広大な山岳地帯で、鬱蒼と茂ったジャングルが展開する。「山原」すなわち「ヤンバル」なのだ。このジャングルに降った雨が山に染み込み、良質の水として豊富に湧き出るところがオリオンビールの工場のある名護市である。
物産センターは品数も多く、那覇ではあまり見かけないめずらしい野菜や果物のあったりするので面白く、ヤンバルのパワーを感じることができる。売店で揚げたてのサーターアンダンギー(沖縄名物の揚げドーナツ)なぞを買って、うなづきつつオリオンビールへ。

製造工程に沿ってビールづくりをお勉強
 道の駅から車で5分で到着。大きな純白の貯蔵タンクにオリオンビールの青いロゴマークが輝いている。工場見学の受付にいくと、さすが見学者が多いだけあって、応対もスムーズ。ここで見学後のビールの試飲券とおつまみ券がもらえるので、見学後の試飲に期待感が高まる。見学は制服を着たコンパニオンの女性がガイドしながら案内してくれる。
オリオンビールの創業は米軍統治時代の1957年。沖縄ビール株式会社として、ここ名護に工場を建設した。ビールは米軍にも納入され、販売量の増加に伴って工場も徐々に増設し、現在は年間7万2千キロリットルの生産能力を誇る。
 見学コースは製造工程に沿っている。最初にあるのは原料の説明コーナー。オリオンビールは世界で最も普及し、日本でもポピュラーなピルツェンタイプのビール。厳選された麦芽はヨーロッパ、オーストリア、カナダ産を、ホップはチェコのザーツ産、西ドイツのハラタウ産を使用している。味を整えるための副原料としてコーンスターチやコーングリッツ、米、大麦などが使用される。

完全オートメーション化された近代的工場
 そして次に案内されたのは仕込み工程。ここでは原料や副原料を粉砕して混ぜ合わせ、時間をかけて煮沸する。少し時間をおいてからろ過して澄んだ液体になる。部屋にはステンレス製の仕込釜、仕込槽、麦汁ろ過槽が並び衛生的な雰囲気。工場は最新のコンピュータシステムにより完全オートメーション化されているそうだ。
 冷却した麦汁は酵母を加えて発酵させると麦汁中の糖分がアルコールと炭酸ガスに分解されて約7日間で若ビールになる。これを数十日間約0℃の低温で熟成貯蔵されてビールが完成する。見学コースの窓から中庭を見ると、大きな屋外貯蔵タンクが並んでいた。
 この後にろ過工程があり透明で琥珀色のビールが生まれるが、見学コースでは次はびん詰・缶詰工程に案内される。この日は土曜日ということもあって、工程はお休みだったが大量にビールを生産するこの工程には最新の設備が整然と並んでいて、動いていればさぞかし壮観だろう。処理能力は瓶詰は毎時3万本、缶詰にいたっては毎時13.2万本の速さを誇る。と、ここまでの工程を15分で案内されるので、中々忙しいが近代的な工場システムによるビールの製造工程を間近で見ることができたのはよかった。

ビール工場の生ビールは格別
 いよいよ、ビールの試飲だ。ゆったりとしたゲストホールで試飲を楽しむ。カウンターで生ビールとおつまみのナッツを受け取り、いざ試飲へ。「うまい!」。那覇市内でもオリオンビールの生ビールを飲んでいたが、出来立てのビールはそれよりも数段おいしい。時間の経過や輸送時のゆれ、温度の急激な変化はビールの大敵だ。工場で飲む生ビールは透明感があり、すっきりとした味わいで格別なのだ。
 飲み終わったところでゲストホールの一角にあるおみやげコーナーに。オリオンビールのTシャツやキーホルダー、携帯ストラップなどがあり、生ビールのおいしさに感動した後だけに、思わず買ってしまいそうになる。そして、オリオンビール。宅配便による発送も行なっているので、家でもオリオンビールを楽しみたいという方はどうぞ。
 南の島の愛すべきビール、それがオリオンビールである。見学工程も全部で30分と手頃なので、北部観光の際にはぜひ立ち寄られてはどうだろう。

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