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ぬる燗で楽しむ吟醸酒
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小川原専務は、他にさきがけて純米酒一〇〇%に転換したことや、最初は偶然だったとはいえ早くから熟成酒に注目したことだけでなく、酒に対して独自の視点を数多く持っている。
たとえば、吟醸酒を燗で飲んでほしいというのもそのひとつ。「夏でも私、燗酒を飲むんですよ。やっぱり食中酒として楽しんでもらうためには、温かい酒で食欲を増進させること。ものを食べたくなるように口のなかを調えてあげる酒が必要だと思うんです。ただ、燗の場合若い酒は飲みにくい。熟成させたほうがいいですね。
うちの吟醸は熟成させてますから、できればぬる燗で飲んでくださいと言います。大吟醸の四年以上たったものなんか、燗すると本当にうまい(笑)」(小川原専務)
もっとも、香りの高い一般の吟醸酒には燗は向かない。もともとあまり香りが強くなく、熟成が進んだ「ひこ孫」ならばこそ、うまさが引き立つのである。こうして熟成酒のうまさをアピールする一方、同社には「活性にごり酒」というロングヒットもある。
昭和四〇年代、にごり酒の早出し競争が全盛となった時代があった。ただ、この時期は火入れした甘口のものがほとんど。ところが同社は、純米の生酒を使った発泡タイプのものを世に問うたのだ。子どもの頃に見た、本来の「澱酒(おりざけ)」を再現してみたいという小川原専務のちょっとした遊び心だった。
だが、このユニークな酒は思わぬ問題を引き起こす。
開け方を書いたチラシを付け、酒販店にも冷蔵庫で保管し、きちんと説明して売るよう要請していたにもかかわらず、吹きこぼして洋服などを汚すというケースが多発したのである。
「クリーニング代で、売上が飛ぶという時期が二年くらいつづきました。いちばんひどいときは絨緞クリーニングから、晴着の洗い張りまで(笑)。でも、これはしょうがないですよね、ちゃんと説明しないで売ったんだから。
いまはラベルに開け方を印刷してますが、いまだにありますよ。服を汚したという人に、『説明書きなんて読む暇なんかないって怒られることが(笑)」(小川原専務)
同社はこのこともきっかけとなって販売体制を見直し、信頼のおける特約店のみに製品を卸すという現在の体制に移行したのだという。
純米酒は日本酒を救うか |
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さて、同社は香りの高い吟醸酒は造らないということを前に述べた。しかし、このタイプの酒を否定しているわけではない。
「香りの強い酒も、なくちゃ困るんですよね。そういう酒があって、うちのような酒があって食卓が豊かになる。それがね、お客様への本当のサービスじゃないかなと思うんです。
うちの酒は個性が強いから、酒販店でもメインのお酒にはなりっこないし、しなくていいんですよ。変わった酒が好きなお客様もいるから、そういう人が楽しんでくれればそれでいい。だから、同業が栄えるってことは、本当にありがたいことですね」(小川原専務)
ただ、それにはやはり、純米酒が主流になることが必要なのだと小川原専務は言う。
純米だからこそ、水などの違いで蔵そのものの特徴が出てくる。そうなれば、造りで競うだけでリベートなどでの販売競争はなくなるはずだと信じている。
また、日本酒の長期低落傾向を止めるためにも、純米酒への移行は必要だと考える。「私はね、正当な造りをした酒は歴史があるんだから必ず生き残ると思います。ワインは、一〇〇〇円未満のものでもちゃんと造ってる。偽物は、本物と闘っても勝ち目はないですよ」(小川原専務)
小川原専務は、度数を下げることにも否定的だ。限界は一三度だという。同社ではこのラインを狙い、四年前から「仙亀」を発売している。この酒は、山田錦を精白八〇%で仕込んだという大胆な酒で、地球温暖化などを原因とする将来的な食料難への対策という意味もある。あと三、四年すれば、山田錦以外の米でも、八〇%精白の酒造りができるはずだという(*通常の純米酒よりも一〇%以上精白度が低いので米のさまざまな成分が多く残っている酒となる)。
「日本酒らしさをちゃんと残してきちっと造れば、あんまり酸の多い酒でワインと対抗しようなんて考えなくても、大丈夫だと思うんですけどね。うちの酒を喜んでくれるのは、意外とワイン愛好家が多いんです(笑)。私もワインも飲むけど、ワインをよく飲んでる人は、アル添はダメですね。正しい日本酒を目指したら、お客様も戻りそうな気がするけどね」(小川原専務)
すべてが純米酒になる日が本当に来るのか、あるいはそれが本当によいことなのかは、軽々に判断はできないだろう。
ただ、ごまかしのない「正しい」酒造りを貫くという神亀酒造の姿勢が、少しずつでも広がっていくことは、日本酒の未来に確かな火を灯すことにつながる。こうした同社の姿勢に共感し、「正しい」酒造りを目指して入社してくる若者も多い。
ともあれ、まずは「ひこ孫大吟醸」のぬる燗という大胆不敵な飲み方を、勇気を出して試してみなければなるまい。
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神亀酒造株式会社 |
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埼玉県蓮田市馬込1978 |
| 電話 |
048(768)0115 |
| FAX |
048(768)6182
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*見学不可 |
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| お酒の四季報(2001年春号) |
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