ジャパン・ウィークの立ち飲みバー

 三月に入ってからやけに身辺が慌しい。滅多に声のかからない旧友達からの誘いが増え、日本からの客が引きも切らない。まさに千客万来という感じだ。というのも、月初の国際レストランショーに始まって、ジャパン・レストラン・ウィーク、東日本復興支援イベント、WBC侍ジャパン関連イベントと、日本食や酒に関係するイベントが目白押しだったからである。
 公共スペースでのイベントでは、グランドセントラル駅で開催された「ジャパン・ウィーク」が、最も大掛かりなものとなった。今年の二月、開設一〇〇年を迎えた同駅は、ニューヨーク二大駅のひとつで、平日はおよそ五〇万人が利用している。ちなみに、絶滅寸前と言われている「バー・カー」(バー設備の整った車輛)も、何本かこの駅に乗り入れている。
 かつて乗客の待合ホールとして使われていた「バンダービルドホール」(約一万一〇〇〇屬梁震榲スペース)で開催された「ジャパン・ウィーク」のミッションは、日本文化や食べ物、酒の紹介を通して、ニューヨーカーに日本旅行を促進すること。観光庁が音頭を取って集まった出展者の中には、JR各社、デルタ航空、食品・飲料メーカー、和食器専門店等の名前が並んでいた。
 今年の目玉は、郷土料理をフィーチャーした「駅弁」。北は札幌の「蟹飯」から、南は博多の「地鶏飯」まで、ニューヨーク市内で営業する日本レストラン九店が用意した駅弁が披露された(事前に催されたジャパン・レストラン・ウィークでは、三五店の協賛レストランで、期間限定の駅弁がサーブされた)。
 とはいうものの、車社会で育ったアメリカ人にとって、駅弁どころか鉄道旅行そのものに馴染みがない。今回は、グランドセントラル駅と来年生誕一〇〇年を迎える東京駅が、姉妹駅として提携を結ぶということで、その締結式も執り行われ、日本の鉄道の旅の醍醐味をニューヨーカーに伝えようと、各ブースでは美しい日本の自然や鉄道を映したビデオやパンフレットなど、趣向を凝らした展示を行なっていた。
 「ジャパン・ウィーク」のもうひとつの目玉は、ニューヨークの著名酒ソムリエ六名を招いての「立ち飲みバー」だ。日頃、「バー・カー」を利用する通勤客もこれにはびっくり。早速、チケットを購入して、普段はなかなか味わえない日本の地酒や焼酎、ウイスキー、ビールの立ち飲みとしゃれていた。
 特設ステージでは、酒ソムリエのクリス・ジョンソン氏による酒レクチャーも開かれ、地酒やビールを飲みながら、氏の話に耳を傾ける通勤客も数多く見られた。少し残念だったのは、バーの入場料が二五ドルとやや高かったこと。できれば、もう少し手頃な値段で、気軽に試飲してもらえたらと思う。 
 このほか特設ステージでは、琴演奏、日舞、島田髷や芸者メイクの実演ショー、着物ショーなど盛り沢山な催し物を用意し、ニューヨーカーの目を楽しませていた。
(たんのあけみ・ニューヨーク在住)
2013年特別号上掲載

月刊 酒文化2013年07月号掲載