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■NYC  ローカル&オーガニック人気

昨秋、5年ぶりにニューヨークを訪れて驚いたのは、食品スーパーに「LOCAL(地元産)」というPOPが溢れていたことだ。日本でも酒売場には「地元の酒」コーナーを設ける店は珍しくなくなったが、それとは売場の熱量がまったく違う。「LOCAL」な商品を好んで選んでいる人がたくさんいることが伝わってくるのだ。
アメリカでは大量生産された食品や安価な輸入品ではなく、地元産のものを選ぶ風潮が、21世紀になってから年々強まっているという話も耳にした。世界のビールのシェア1位のアンハイザーブッシュ・インベブ社が、2位のSABミラー社を買収して、全世界3割ものシェアをもつ超巨大企業になろうというのに、アメリカでは『バドワイザー』がシェアを下げ、富裕層や高学歴層に支持された中小零細なクラフトビールが急成長している。彼らの合言葉も「LOCAL」だ。グローバリズムは勝手にやってくれ、俺たちは自分で直に見て触って、つくり手と話せる食べ物を選ぶと、生産者も飲み手も言う。そこに「オーガニック」の要素も加わってくる。農薬を使わないと農作物の多くは収穫量が減る。それで割高になるのは仕方がない、環境を保全する循環型の農業を選ぶと言う。
家賃の高いニューヨーク、特にマンハッタンに住めるのは富裕層だ。低所得層は「LOCAL」や「オーガニック」と言っていられないと思うのだが、ニューヨークで目の当たりにすると、いずれ日本にもこうした消費トレンドがやってくると言いたくなる。冷静にと自戒しつつ、やはりこんなトピックを採りあげてしまう。(酒文化研究所 山田聡昭)
2016年秋号掲載

月刊 酒文化2016年08月号掲載