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韓国のソジュとビール。酒と友情と思い出

 韓国では友人関係を築くために酒は重要な存在だ。二〇一六年に韓国と中国で同時公開され、大旋風を巻き起こしたドラマ「太陽の末裔」でも、さまざまなシーンに酒が出てくる。軍人役の主人公ユ・シジン役のソン・ジュンギと同僚で親友のソ・デヨン役のチン・グが、「〇泊三日」と宣言して飲み屋で三日間飲み続けるというシーンでは、ソジュの酒瓶が積み上がっていった。二人のそれぞれの恋人が女性同士で酒盛りするシーンも印象深かった。
 ソジュ(焼酎)はどこの街でもあちこちに看板を見かけ、広く親しまれていることがわかる。かつては、オジサンの酒のイメージが強かったが、過去一〇年ほど主要メーカーがイメージ作戦を展開したことで、若者や女性にも食事の席に欠かせない酒として定着したと聞く。
 ソジュの広告には、人気の女優や女性歌手が起用される。広告や瓶のラベルに笑顔の女性を見たことがある人もいるだろう。韓国でシェアが高い『チャミスル』(眞露)はIU、そして『チョウムチョロン(鏡月)』(ロッテ系列)はスジという、トップクラスの女性歌手が看板となっている。二人とも「国民的妹」と呼ばれ、歌の実力とルックスを兼ね備えた人気者だ。CMはどちらも、二人でしっとりと飲む恋人バージョンと、友達とワイワイ飲むという友人バージョンがある。
 筆者が今年一月にソウルに滞在した日は、最高気温がなんとマイナス一五度で、現地の人も驚く強烈な寒波にみまわれた。極寒のなか友人は、外国人がほとんど来ない地元の韓国料理店に連れて行ってくれた。ソジュをなみなみと注いで杯を重ね、友好を深めた夜が忘れられない。ソジュはアルコールが二〇度前後のものが多く、結構強いが、悪酔いせず、愉快な気分になった。翌日も残ることはなく、すっきりとした目覚めだった。
 また、最近のビール事情の変化も見逃せない。韓国のビールと言えば『ハイト』などが日本でも知られているが、ここ数年はクラフトビールがブームだ。韓国各地のブルワリーが独自のビールを生産、ソウルの繁華街をぶらつくと「クラフトビールがあります」とアピールする看板を目にする。ふらっと入ったバーで試したのは、アンドン・ブルーイング(安東麥酒)の『ホップスター』。韓国語のメニューの説明をグーグルの画像翻訳機能を駆使して読み取ったところ、アルコール度数は六・九%で芳醇な香りとのこと。飲んでみるとその説明には偽りなく、気持ちよく酔える。深夜にもかかわらず、韓国名物のチキン唐揚げを食べつつ、つい杯を重ねてしまった。
 三月にソウルを再訪した際には、滞在先のホテルの近くでクラフトビールを試した。小さいがおしゃれなインテリアの落ち着いた店。オーナーとおぼしき初老のこざっぱりした男性が「いかがでしたか?」と韓国語で話しかけてくる。たどたどしい韓国語で「とてもおいしいですよ」と言うと、満面の笑みで「ありがとう」と応える。友人と楽しくやるのもよいが、一人で旅をふり返りながら、地元の人との交流する夜も悪くない。
(かわばたたかし・シンガポール在住)
2018年特別号上掲載

月刊 酒文化2018年09月号掲載