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インドネシア─酒の販売禁止でコンビニが潰れる!?

 インドネシアにもコンビニはたくさんあるが、日本と決定的に違うのは酒類の扱いだ。インドネシアは2億5千万人が住む人口大国であり、9割以上がイスラーム教徒(ムスリム)だ。世界最大のムスリム人口を抱える国なのだ。とはいえ、スーパーマーケットなどで簡単にビールやウイスキーを購入できるし、地元の人にも人気のイオンでは日本酒なども販売しており、酒は普通に楽しむことができる。
 コンビニについては、少し事情が違う。インドネシア政府は2015年、コンビニで酒類の販売を禁止するという方針を打ち出した。店舗が多く、誰でも簡単に立ち寄れ、人目を気にせずに買うことが出来るため、ムスリムが購入してしまう恐れや、非ムスリムだったとしてもアルコールへの依存を誘発してしまうかもしれない、という危惧が背景にある。それまでは、イートインスペースでビールを飲む、非ムスリム客の姿さえ見ることができた。
 インドネシアのセブンイレブンは、モデルン・インターナショナルという会社がフランチャイズ経営のライセンスを持っている。同社が2016年にメディアに対して、店舗売上の8〜10%は酒類と主力商品であることを明かした。酒のつまみとなるスナック類の販売も落ち込んだ。酒類の販売規制後には20〜30店舗が経営不振に陥り、閉店に追い込まれるケースも出てきたのだ。
 さらにセブンイレブンは今年6月末、161店舗を全て閉店した。直接の理由はモデルン・インターナショナルの、セブンイレブンのフランチャイズ経営の権利売却の不成立だ。今年4月に、タイの大手財閥のCPグループが6月末までに買収すると発表したのだが、6月5日に一転して、計画を白紙に戻してしまったのだ。その後に発表されたモデルン・インターナショナルの第1四半期決算は、売上高は37%減、純利益は52%減と散々だった。同社の総売上は75.8%がセブンイレブン事業からである。そして同社は、セブンイレブン全店舗を閉店すると発表したのだった。タイの財閥の翻意が直接の引き金だが、そうさせたのはセブンイレブンの業績の悪化であり、その原因の一つが酒類の販売規制だ。もちろん、他の理由も指摘されている。インドネシアには、アルファマートやインドマレットという地場のミニ・コンビニが網の目のように店舗を展開していることや、商品の価格帯が高すぎたなど、経営戦略のミスという要素も多分にあるだろう。
 インドネシアのビール業界は、他でも若干風向きが怪しい。インドネシアで一番よく売れているビールの銘柄は『ビンタン』であるが、製造を手がけるマルチ・ビンタン社は、ノンアルコール事業の強化に乗り出している。同社は今年5月末にはノンアルコール専門の子会社を設立、本社内にあった事業を分離し、専業化する方針を示した。マルチ・ビンタン社の2016年の売上でアルコール飲料は前年比18%増と堅調な伸びを示したが、ノンアルコール飲料は新商品がヒットしたこともあり、前年比50%増と絶好調であった。日本でもビールメーカーは飲料事業を手掛けている。同様のビジネスモデルで進んでいくのだろうか。
(かわばたたかし・シンガポール在住)
2017年秋号掲載

月刊 酒文化2017年09月号掲載