中国伝統の白酒文化

 今回は八〇〇年以上の歴史がある伝統の蒸留酒の白酒を採りあげます。白酒の原料は、高粱などの穀類と麹と水です。ただ安価なものにはさつま芋や糖蜜を使うものもあります。戦後、新しい中国成立の初期に食糧不足でこうした原料での酒造法が開発されました。
 コンビニでよく見られる『紅星二鍋頭』や、香りも味も薄くて若者向けの『江小白』などがこのタイプで、気軽に飲めるのでよく売れています。値段は瓶ビールと同じくらい、ストローで飲む人もいて日本のカップ酒に似ています。
 もっと複雑で伝統的な白酒に興味があれば、必ず個体発酵の白酒を試してください。蒸した穀物を土の中の穴に埋めて個体のまま発酵させる手法です。頃合いを見て掘り出して、蒸してアルコールを蒸留します。
 白酒は製造方法と香りで八種類に分けられ、馥郁香系、醬香系、濃香系、清香系、鳳香系、米香系、胡麻香系とその他香系があります。代表的なのは醬香系、濃香系、清香系の三つです。
 醬香系の代表は空港の免税店でもよく見る貴州省の『貴州茅台酒』です。醬香は発酵中の豆板醬のような深い香りで、一〇〇種類以上のアロマ成分が含まれています。そして、高級な香水みたいに、時間とともに変化します。トップノートは繊細でエレガント、飲む時には深くて甘く、飲みきった後のグラスには薔薇のような香りがあります。
 濃香系は香味成分と有機酸が多く含まれています。まろやかな甘みと旨みのバランスの良さが特徴です。濃香系白酒には、吟醸酒の香り成分であるカプロン酸エチルが多量に含まれているので、飲んだ後のグラスから吟醸香を感じるかもしれません。商品としては四川省の『国窖一五七三』『五粮液』、『剣南春』が有名です。もしあなたがこのお酒でもてなされたら、あなたとの友情をとても大事にしているという意味です。
 清香系は白酒の中でも一番飲みやすいタイプです。セラミック製のタンクに石板の蓋をかぶせてシンプルな菌で発酵させるため、すっきりした香りときれのある余韻が特徴です。代表ブランドは山西省杏花村『汾酒』です。
 なお、中国式のディナーパーティで白酒を飲む時には、とても小さいグラスと徳利を一人一個持ちます。乾杯では日本と違って、自分の徳利から自分のグラスに注ぎます。勝手に他人のグラスに注ぐと、飲み切れない分を他人に飲ませていると思う人もいるので、お酌は相手の徳利から注いであげるのがおすすめです。また乾杯は一気に飲み干します。
 「対酒当歌、人生幾何」は三国志の曹操の歌。人生は短い、飲める時には歌いながら飲めという意味です。皆様もぜひ歌いながら白酒を楽しくお試しください。
(フォールコウ・上海在住)
2020年特別号下掲載

月刊 酒文化2020年10月号掲載