中国でトップ人気の酒類飲料

 中国では日本酒のシェアはまだわずか、今回は中国人がどんな酒に親しんできたかを紹介します。
 2018年度の中国酒類報告によれば、もっとも製造量が多かったのはビールです。3,810万KLとあり、2位の白酒の870万KLの4倍以上でした。中国に来たらぜひ『青島ビール』を飲んでみてください。日本の友人によると中国のビールで一番に浮かぶのがこれだと言っていました。
 大量につくられている中国のビールが、海外で知られていないのは、大半が国内で消費されているからです。このように書くと中国人はビールが大好きだと思うかもしれませんが、一人当たりの消費量は日本ほど多くはありません。中国の人口は14億人と巨大なので、総消費量は膨大になるのです。
 気軽に楽しめるビールは流行にも敏感です。韓国ドラマ『星から来たあなた』が放送された時には、ビールとフライドチキンの組み合わせもが流行りました。でも、中国人がほんとうにビールとぴったりだと思っているのは、羊肉や牛肉の串焼き、またはザリガニや牡蠣、ホタテのバーベキューです。夏の夜に屋台で焼肉と焼海鮮を食べながら、仲間と一緒にビールを飲むのは、お金がない大学時代でも楽しめる小さな幸せです。
 消費量が第2位の白酒は、中国伝統の蒸溜酒です。白酒が広く知られるようになったのは『貴州茅台酒』のおかげだと言われます。この酒は醬香型という華やかな香り豊かな白酒で、かつては滋養強壮の酒と宣伝されたこともありました。中国人にとっては魅力的な宣伝文句です。さらに製造工程が複雑で生産量が少ないうえに、熟成期間が長いほど香ばしく濃淳になることから、『茅台酒』は最高級の酒として大事な接待で使われるようになりました。
 ところで白酒には高価な『茅台酒』だけでなく、1000円以内で買える安価な商品もあります。その代表は『二鍋頭』で、コンビニにも並んでいてどこでも買うことができます。最高級品から誰でも飲めるリーズナブルな商品まで揃う白酒が、流行らない理由はないでしょう。
 続いて多く生産されているのは最も歴史がある醸造酒、黄酒です。黄酒という名前は馴染みがないかもしれませんが、日本でも中華料理店でよく飲まれる紹興酒の仲間です。紹興は黄酒の代表産地で、定められた原材料と製造方法で紹興の地でつくられたものだけしか「紹興酒」と名乗れません。日本では黄酒と「紹興酒」を明確に区別しないようですが、きっと最初に日本に入ってきた黄酒が紹興酒だったからでしょう。実は私が住んでいる上海でも『石庫門』という黄酒があります。ほのかに甘みがある黄酒で、甘い味付けの上海料理と相性が抜群です。
 そして4位はワインです。2018年度には輸入70万KL、国産70万KL、合計140万KLが消費されました。近年は中米の貿易摩擦などの影響で輸入が徐々に減っています。中国産のワインは安価な印象がありましたが、近年は丁寧にブドウを栽培し、海外の著名な醸造家の指導で醸した高級品も出てきました。6年前には『敖雲』というワインに4万円の値段がつき話題になりました。
(フォールコウ・上海在住)
2020年夏号掲載

月刊 酒文化2020年10月号掲載