プロワインチャイナとテイスティングコンクール

 こんにちは、日本ではもう今年の搾りたての新酒が飲まれていることでしょう。中国ではまだ海外からの入国者にPCR検査と14日間の隔離健康観察が義務付けられていて、私たち上海の日本酒ラバーは日本に行けず、とても残念に思っています。
 今年は世界中がタフな一年間でした。日本では春に「新潟酒の陣」と「クラフトサケウィーク」が立て続けに中止、さらにオリンピックまで延期となりました。中国でも上半期は同様でしたが、8月にたくさんのウイスキーを楽しめる「ウィスキー・エル!」が上海のホテルで開催されたのを皮切りに、酒類イベントが相次いで催されています。特に11月は輸入酒のカーニバルと言ってよいほどでした。輸入品をテーマとした「第三回中国国際進口博覧会」(略称:進博会)が一週間にわたって開催され、64ヶ国から674社の企業が参加しました。そのあとすぐに「FHCチャイナ(上海環球食品展)」、そして酒類の国際展示会「プロワインチャイナ2020」が三日間開催されました。
 なかでも盛り上がりを見せたのが「プロワインチャイナ」です。この展示会は今年、参加者をプロバイヤーのみに制限したことと新型コロナウイルスの影響で、来場者数の減少が懸念されていました。けれども蓋を開けてみると前年を約1割上回り、マスクを着用している以外は従来と変わらない盛況ぶりでした。
 プロワインチャイナには去年から日本酒造組合中央会が出店しています。今年は日本酒17蔵と焼酎2蔵がブーズを出しました。蔵元は上海に来ることはできず、商談はすべてオンラインで行われました。それでも上海だけでなく中国の日本酒の人気の高まりが実感されます。去年までは米酒(中国の伝統酒)と日本酒の違いを来場者のほとんどが知らなかったのに、今年は純米大吟醸酒を目指してブースを訪ねる人が大勢いました。参加者をプロバイヤーに限定したことも原因の一つで、ワイン業界の人達が日本酒に関心を向け始めた表れだと思います。
 会期中に開催された第二回中国清酒ブラインドテイスティングコンクールも話題になりました。早々に満員となり、北京や杭州から来た参加者もいました。質問の難易度は日本でのきき酒コンクールとほぼ同じマニアックな質問ばかりですが、正解率が70%以上で決勝に進んだ人が6人もいました。
 このコンクールはまだ第二回ですが、参加者の日本酒の知識と経験のレベルは、去年より飛躍的に上がったと感じます。唎き分けるだけでなく、自分がその酒にどんな印象をもち、どう考えたのかを説明して、飲み方を提案できる方が増えました。豊富な知識を持ち、よほどの数の日本酒を飲まないと、できないことだと思います。
 この先いつか、中国と日本がきき酒の選手を集めて、対決することもあるでしょう。私はその日まで、いろいろなお酒を味わいながら上海で頑張ろうと思います。(フォール・コウ・上海在住)
2021年冬号掲載

月刊 酒文化2021年03月号掲載