缶入りワインとコーラ味ワイン、若者のワイン離れに悩むフランス

 ワイン離れが激しいフランスでは、その消費量は1960年代に比べると3分の1に減少している。また1980年、半数以上のフランス人が毎日ワインを飲むのを習慣としていたのに、今日、その数はなんと17%。またワインを全然飲まない人の数は当時の2倍、38%に達した。イギリスのBBC news magazineは「フランス人が大切にしていた、おいしいものをみんなで一緒に味わい嗜む風習が消滅しつつある」と嘆いている。
 とくに、若者のワイン離れに対応するために、いろいろな工夫がなされている。
 WINESTARは今年、缶入りAOC(原産地統制呼称)ワインを売り出した。社長のセドリック・セガルは「ネスレがコーヒーでしたことをワインで」と言っている。エスプレッソマシンNespressoが大成功したのを例に、テーブルワインではなく、上質ワインを缶入りでということなのだろう。187ml入りの小さな缶で2.5ユーロ、1リットル13ユーロになる計算だ。
 対象客層は若者。ピクニックや職場食堂、TGV(新幹線)や飛行機のなかでの消費をターゲットにし、ソーダ飲料と同じ感覚でというアイディアだ。今のところ、ラングドック地方のAOCコルビエール、シャトー・ド・リルのみ。30年来、ブドウ栽培者ポル・フランドロワの手で醸造され、過去に各種のコンクールで200ものメダルを集めた有力な銘柄だ。白、キュヴェ・エミリー2011、キュヴェ・アレクサンドル2012のロゼ、キュヴェ・アンドレアス2011の赤の缶入りが、大手スーパーマーケットのカルフール・パリ・サンラザール店、カーヴィストやパン屋に並び始めている。もちろんインターネットで買うことができる。9月からはボルドー、ブルゴーニュ、コート・ド・ローヌも発売予定ということだ。
 瓶が運送中に割れる危険や、コルク栓が悪くなるを防ぐことができること、持ち運びが軽いことなどがその特徴だ。そしてWinestar社は、缶そのものもコカ・コーラやハイネケンの缶を製造しているアメリカのBall社のものを使うことで、あくまで上質なものを求めている。ワイン・マーケティング会社I.D.Vin社は、「フランス人にとってワインボトルが音をたてて開く瞬間はなにものにも代え難いため、紙パック入りワインですら販売が難しい。缶ワインの浸透には時間がかかるだろう。しかし、フランス人ほど食にうるさくないドイツでは売れるのではないだろうか? ドイツではワインの流通すらハード・ディスカウント店のLidlが30%を占めているのだから、缶入りワインに抵抗はないだろう」と解説する。
 ワインのソーダ割りといったらバスク地方やスペインで若者に人気のカリモーチョがあるが、そのほか、コーラ味のワインというまがいものまで出てきている。ボルドーのネゴシアン、Haussmann Familleは、今年6月のVinexpoで「Rouge sucette」という名でコーラ味の赤ワインを売り出した。こちらのほうも若者層をターゲットにし、ソーダ飲料に慣れきった彼らが、ワインへ移行するのを助けるためと謳っている。「香りを加えたワイン」と聞くだけで髪の毛を逆立てそうなフランス人にはショックなニュースかもしれないが、2013年にフランス国内で販売されるワインのうち3000万本が香味を加えたアロマタイズドワインで、その本数は昨年の2倍に跳ね上がっている。このコーラ味のRouge sucette、アジア市場も狙っているということだが、どうだろうか?
(ぷらどなつき・パリ在住)
2013年秋号掲載

月刊 酒文化2013年08月号掲載