イタリアのチーズ

 イタリアはフランスと並ぶチーズ王国で、生産されるチーズは400種を超える。種類の多さだけでなく、2000年を超えるその歴史も負けていない。イタリアの中でチーズの生産地といえば、ミラノを中心とするロンバルディア地方とピエモンテ地方がメインである。これらの北部地域のチーズの原料は牛乳がほとんどで、南部にいけば、羊乳や水牛乳が多くなる。
 フランスでは食後にチーズプラトーが出され、チーズをそのまま食べる習慣がある。イタリアでも最近はそうすることが増えてきているが、本来はイタリアでは料理食材のひとつとして生かすことが多い。どんな活用法があるかというと、ピザの上に乗せて焼いたり、加熱してリゾット、パスタやニョッキのソースにしたり(クアトロ・フォルマッジのソースが代表的)、ティラミスのように、クリームに混ぜたり、またリコッタのようにそのままデザートに使ったりする。ピザに欠かせないモッツァレッラはフレッシュチーズの代表であり、サラダやプロシュット(生ハム)と共に、前菜として食べられる人気のチーズである。また、上にかけるだけでも美味しいアクセントになるパルミジャーノ・レッジャーノやペコリーノは、パスタの欠かせないパートナーである。
 硬さ、熟成、原料などによって様々な分類の仕方があるチーズは、ワインとの合わせ方が意外に難しい。前菜として、また蜂蜜やジャムをかけてデザートとしても食べられるトミーノのような塩味の少ないフレッシュチーズ、またはロビオラやスカモルツァのような軟質タイプのチーズ、これらには適切な酸度のある軽い白がピッタリ。モッツァレッラにはスプマンテも合う。
 ロックフォールやスティルトンと共に世界三大ブルーチーズに挙げられているゴルゴンゾーラには、青カビが多く辛味の強いピカンテと、クリーミーでマイルドな味わいのドルチェの2種類がある。ピカンテはそのまま食べることもあるが、リゾットに入れたり、パスタのソースに使われることが多い。数年前まではドルチェの人気が圧倒的だったが、近年では古典的なピカンテのファンも急増している。ソムリエがゴルゴンゾーラに合わせるワインは、アマローネ、バルベーラ・ダスティのような後味がしっかりした赤、またはピコリットやソーテルヌのようなデザートワインがお勧め。
 グラナ・パダーノはイタリアの北部のハードチーズで、パルミジャーノに比べて熟成期間が短い分、塩分濃度が低い。イタリアチーズの王様パルミジャーノ・レッジャーノは、最低1〜4年の熟成を経て食卓に届く。これらに合うワインは長期間熟成したバローロ、バルバレスコ、ブルネッロ、カルミニャーノのような偉大なタンニンと骨格のあるワインや熟成したワイン。アシアーゴやフォンティーナみたいな硬質のチーズはピノネロ、ネッビオーロと相性がよい。
 ペコリーノ、カネストラートやトーマのような熟成したハードとセミハードタイプのチーズにはモレッリーノ・ディ・スカンサーノ、ネロ・ダヴォラ、ブラ、カステルマニョやタレッジョにはアマローネやサグランティーノ・ディ・モンテファルコのようなコクのある赤ワイン、またムッファト・デッラ・サラのような貴腐ワインが向いている。
 イタリアのチーズの品質管理にD.O.P.(原産地呼称統制)システムが使用されており、D.O.P.チーズは現在33種類。
 もちろんルールを守らずに、自分なりにチーズとワインやビールの相性の良し悪しを探っていくのも楽しみ方のひとつである。
(シエイラ・ラシッドギル:コラムニスト、ローマ在住)

月刊 酒文化2007年10月号掲載