Uがワインへの補糖を許可。怒るイタリアのワイン生産者

 近頃のイタリアのワイン生産者とワイン関係者がヨーロッパ連合が採用した規定で揺れている。12月上旬ブリュセッルで集まったEU27国の農務大臣達が、3日間の交渉の後に北ヨーロッパのワイン生産者のプレッシャーに逆らうことができず、ヨーロッパ北部の生産者のワインに砂糖を加えることを認めたのである。北ヨーロッパのワイン生産者は、アルコール発酵を補強するために、糖類の助けを得る習慣を押し付け、イタリア、スペイン、ギリシア、キプロス、ポルトガルなどの南ヨーロッパのワイン製造者達は従わざるを得なくなった。
 補糖していることをラベルに示す義務を拒否しながら、ワインに砂糖を加えることが許可されたというニュースはイタリアメディアで大きく扱われた。イタリアがこのニュースで大きく騒いだ大きな理由の一つは、イタリアと地中海諸国では伝統的に砂糖の添加は国内の法律で禁止されているからで、ワインに加えることが許可されている唯一の甘味料は天然の発酵前のブドウ液(モスト)としている。フランスやドイツや他の北部ヨーロッパ諸国のワインを購入する消費者は、この法律が実施される予定の2008年から、そのワインに糖類が加えられたかどうかも知らされず、何の保証もなしに飲まなければならないであろう。
 食品の加工過程、農業政策やラベル情報についてEU全体にかなり厳しい規定を押しつけるEUだから、今回のワインに関しても同じ態度が期待されていた。しかし、厳しい気候のせいで、ワインにするに十分な糖分が得られない北方の諸国に砂糖を加える許可を与え、南欧のヨーロッパの人々には思いかげない展開となった。
 なお、この新しい法律によって、北ヨーロッパでは、砂糖添加によって許可されているアルコール度を最大3%、ドイツとフランスの一部を含む中央ヨーロッパでは2%、イタリアやスペインなどがある南ヨーロッパでは(ブドウ果汁加入によって)1.5%アップできるという。
 地元の新聞によると、イタリアの農務大臣は、イタリアのワイン製造者がモストを使用することから、EUの助成金の適用範囲にはいることを重視したという。そしてEU域外からの格安ワインのヨーロッパ進出を、止める可能性があると見られているこの改正に賛成することを発表した。
 一方、イタリア農業協会やワイン生産者は、このような結果をイタリア国内の高品質ワインに大きなリスクを与えてしまうとともに、不正な競合を生んでしまう規定と見なし、強く批判している。
 この法律の施行に伴い、もともとワインに補糖する習慣があったフランス、フランスはワインの生産量や品質においてイタリアの歴史的な競合相手だが、その差が広がるのではないかと恐れる人も多くいる。
 一方、イタリアの消費者には補糖だけでなくワインにモストを使うこと批判する人もいる。モストはブドウ果汁とはいうものの、砂糖を加えることと意味合いは同じだと言うのだ。そして、どちらもワインの魅力を損なわせることだと主張する。
 この議論はますます過熱する気配だが、私はひとりの消費者として、デザートワインを含め、少なくともラベルにワインに何か添加されているのか、明確に表示される権利を持ちたいと思う。
(シエイラ・ラシッドギル:コラムニスト、ローマ在住)

月刊 酒文化2008年02月号掲載