食と酒の祭典 ミラノ万博開幕

 5月に開催したミラノ国際博覧会(ミラノ万博)をゆっくり訪れるチャンスをやっと手にした。140以上の国・地域が参加する万博のテーマは、「地球に食料を、生命にエネルギーを」だ。安全かつ健康的な食料を持続的に供給していくための各国の取り組みが示されている。世界の人口の増加に対しどのように食料の生産性を高めるか、どうしたら貧困層での食糧不足を減らせるか、先進国に多い廃棄や食料の未利用をどうなくすかなど、考えさせられるとともに各国の文化に触れる貴重な機会であった。
 日本館は連日1時間待ちの行列ができるなど人気パビリオンになっている。テーマは「HARMONIOUS DIVERSITY―共存する多様性」で、和食が2013年12月にユネスコ無形文化遺産に登録されたことを踏まえ、日本の強み部分とも言える和食を前面に打ち出す。和食に欠かせない酒も今回の展示の主役のひとつだ。世界的に日本食がブームとなって「酒」にも注目が集まるなか、6月には日本館で酒の試飲会が開催され、全国の33蔵元の50もの商品が紹介された。
 ミラノ万博では「フランチャコルタ」が公式ワインとなっている。イタリア北部のロンバルディア州のフランチャコルタ地方でつくられるこのワインは、伝統的な瓶内二次発酵方式の極上のスパークリングワインだが、万博内のワインバーで気軽に楽しめた。イタリアの最上級ワインをつくる87社が交代で5タイプの「フランチャコルタ」を用意し、グラスでサービスしているのである。サーモンやキャビアなど高級食品とともに楽しめるようになっているのは喰いしんぼうのイタリアらしい。
 だが、今回の万博のお酒に関するハイライトは、なんと言っても開催国イタリアのワイン館だろう。イタリア館内に設けられた「Vino−A Taste of Italy」では、ワインの歴史やイタリアワインの特徴を、五感で体験し学ぶことができる。2階には全国20州の1400種類ものワインが州ごとに並べられ、試飲できるようになっている。10ユーロで好きなワインを3杯試飲することできるワインカードがもらえる。ワインは真空状態で冷蔵庫に保管されており、セルフサービスで楽しむことができるが、州ごとにソムリエがいるので、説明してもらうこともできる。ワインショップでよく見る仕組みだが、これだけのワインが並ぶのは初めてではないだろうか。小さなワイン生産者や大手生産者、手頃なワインから高級バローロやアマローネまで幅広くワインが楽しめるほか、グラッパコーナーもあればテイスティング会やセミナーも毎日開かれる。10月31日まで開催されているので、ぜひミラノ万博に足を伸ばしてみて欲しい。
(しぇいららしっどぎる・ローマ在住)
2015年秋号掲載

月刊 酒文化2016年03月号掲載