インド流お酒のラッピング

 日本からいただくお土産で驚かされることは、包装がとても丁寧なことです。色とりどりの包装紙に包まれ、中のお菓子ひとつひとつに小さな乾燥剤が挿入され、ビニールなどでパックされている。いささか過剰包装気味と感じることもありますが、その細やかさに感動すら覚えます。またお菓子の箱や包装紙が、使う用途もないのに捨てることが出来ずため置きたくなってしまうほど綺麗な物がほとんどです。
 もちろん、インドでいただくプレゼントにも包装はされていますが、包装紙ではなくセロファン。それも金色や銀色のラメが入った物が主流です。こればかりは好みの問題ですが、包装のされ方も脇を折り込むいわゆるキャラメル包み。セロテープが、いたるところにベタベタと張られ、見た目もどこか歪で細やかな気配りがされているとは感じられません。お店でプレゼント用の包装をお願いする時も、別料金をとられる事が多く、日本の包装の細やかさを知っている私には満足の行く仕上がりではありません。最近は、手間はかかりますが、ラッピング用のセロファンを購入し、自分で包装する事にしています。
 先日、知人からのパーティのお誘いを受け、シャンペンを持参することに決め購入しました。
 最近デリーの酒屋もようやく内装に気を配った明るいお店が増えてきましたが、それでもラッピングを頼めるような雰囲気ではありません。駄目もとで、お店の方にラッピングをお願いしてみましたが、使い古しのプラスチックの白い袋を探し出してくれるのが精一杯でした。日本で売られているようなボトル専用のラッピング袋など酒屋で置いてあるわけもなく、また、どこで売られているのかさえ検討もつきませんでした。購入したシャンペンは、裸で持っていける程の銘柄品でもなく、結局、自宅でラッピングをすることにしました。
 しかし、いざ自分でラッピングしてみると、四角い箱とは違うので、なかなか綺麗に仕上がりません。ベタベタとセロテープを張って包装紙用のセロファンをボトルの形に落ち着かせようとしても、形にそってなじんではくれないのです。万策つきたかと途方にくれていた私にくれた知人からのアドバイスは、なんと路上のお花屋さんにラッピングを頼むことでした。なんて突飛な発想だと思いましたが、イギリス帰りの知人曰く「彼らは毎日毎日お花を包んでいる訳だから素人の私達よりも技量は上のはず。また金や銀色のセロファンで包むよりも、お花用の透明で少し図柄が入ったセロファンの方がシャンペンの黒いボトルにはあうはず。そしてなによりも彼らは色とりどりのリボンも持っている」。
 確かに言わんとすることは理には適っています。そこでさっそくマーケットに戻り、お花屋さんにラッピングを頼むと、彼らは慣れた手つきでささっとラッピングに取り掛かり仕上がりも上々でした。
ここ 二、三年でお酒に対する意識が大分変わってきたとはいえ、まだまだお酒はこっそり買う物。またお酒をホームパーティなどのお土産に持って行く習慣があるのも、海外に住んだ経験のあるほんの一部の人たちの間です。
 それにしてもシャンペンのラッピングをお花屋さんでするとは、必要は発明の母なりではありませんが、彼らの発想の豊かさというか柔軟さに、改めて脱帽させられた出来事になりました。
(いけだみえ フォトグラファー・ライター、ニューデリー在住)

月刊 酒文化2007年09月号掲載