酒の取り締まりあれこれ

 酒にまつわる中国での取り締まりと言えば、ニセ酒というのが定番。工業用アルコールを使用したニセ酒を飲んで死者が出たという悲惨な事件は何度も起きている。ニセ酒を造って販売した者たちには死刑判決が出るなど極刑も言い渡されているが、絶えることはない。
 二〇〇六年度のドイツ「ユリシーズ国際ルポルタージュ文学賞」佳作となった周勍著『民以何食為天』(邦題『中国の危ない食品 中国食品安全現状調査』 草思社刊)に、「色素ブドウ酒の簡単な識別法」が掲載されているのは、ニセ酒の被害が広範な証拠だろう。
 三年ほど前からシャンパンやウォッカにまで被害は広がっている。業界関係者は、「ドンペリの空瓶が三〇〇元(約四〇〇〇円)もの高値で取引されているのは、ニセドンペリが横行しているから」と話す。
 素面であれば、香りを嗅いだ時点でニセ酒と気づきそうなものだけれど、酔ってしまえば判別も難しくなる。酔う前に、自己防衛をはかるしかない。特に、お酒が大量に消費される春節(旧正月)シーズンは要注意。銘柄でいえば誰もが知っているポピュラーなブランドほどニセモノ業者の利益が上がるため出回っているものも多い。
 しかし最近は、酒にまつわる取り締まり対象は犯罪グループだけでなく、一般の人へと広がっている。
 マイカーブームを受けて、飲酒運転も急増。死者が出る事故も起きており、飲酒運転の取り締まりが強化されているのだ。複数の死者を出した者には、死刑判決までも出ている。
 公安部は八月一五日から二カ月間、全国的に取り締まりを強化。上海でもあちこちで検問による渋滞が起きた。取り締まりの方針は、ー魑ぢ咾啀薪召榔薪礁筏証三カ月間没収、⊆鮨譴け薪召楼豸淨間の拘留および六カ月間の免許証没収、0貲間に二回、飲酒運転で検挙された場合は運転免許の取り消し及び二年間の新規免許取得の禁止などの処罰を行うことになっている。
 外国人も例外ではない。地元紙によれば、飲酒運転と偽造免許証携帯が発覚した東南アジア出身の外国人が検挙され、罰金五〇〇元(約六八〇〇円)と拘留一〇日間の処罰後、国外退去となっている。
 運転ルールなどなきがごとしの上海で車の運転しようなんて勇気があるなぁ――。数年前まではそう口にする人が多かった日本人社会でも、中国の免許を取得して運転を始める人も少なくない。私の周囲でも数えれば、両手では足りなくなっている。となれば、検挙される日本人が出てくるのも当然のなりゆき。
 ある男性の場合は、行きはマイカーを運転して客をレストランへ連れていったが、接待後はタクシーを拾おうとした。ところがいつまで経っても拾えない。客が立腹するので仕方なくハンドルを握ったら、御用、となった。
 しかし検挙されても、強力なコネとネゴシエーションのおかげで処罰を免れた人もいるし、拘留された人にもそれなりの「温情」がかけられている。
 名づけて、分割拘留。土日のみの拘留を八週続ければいい、というものだ。土日だけなら、仕事に支障を来すことなく「お務め」を果たすことができる。会社に知られずに済んで不幸中の幸いと言うべきか。さすがに融通無碍の国である。しかし、日本人にも融通してもらえるのだから、中国人に対しては推して知るべし。融通ばかりしていては、飲酒運転も簡単にはなくなりそうにない。(すどうみか・上海在住)

月刊 酒文化2009年12月号掲載