ワイナリーの広告事情

 南アフリカのレストランのうち、トップ1000に入る美味しいレストランを紹介する『eat out』誌が発売されました。レストランについての詳細な批評もさることながら、グルメ必見の1冊ということもあり掲載される広告はユニークなものばかり。
 ワインの広告では製品が造られた背景や歴史をストーリー仕立てで紹介するスタイルが目立ちます。雑誌で下調べしてまで食事を楽しみたいというグルメたちの知的好奇心をそそりそうです。
 まず製品の歴史の長さをアピールするのはこちらの定番。ワインに限らず食料品から日用品まで必ず見られるのが「Since 〜年(〜年以来の信頼)」の文字。消費者が保守的と言われる南アフリカでは、古くから家庭で使われているもの、長年愛用しているものが好まれ、目新しいものには簡単に飛びつかないという傾向があります。
 ワイナリーBlaauwklippenは、「申し訳ございませんが、お客様は初回のお食事に300年遅れました。しかし幸いにも、私どもはそれから300年以上続いておりますので大丈夫です」と歴史の長さをアピールしています。
 Rhebokskloof は「私どもは最近多くの友人をつくることに成功しています。でも実はこれは1797年から続けていることなのです」と表現し、長年の評価に誇りを持っていることを伝えています。
 Roodebergは白い背景に1本のボトルを置き、上部中央に「Legend(伝説)」の文字のみ。シンプルに歴史の重みを表しています。
 視覚に訴える広告もあります。Spierはドレスのジッパーを下ろした女性の背中一面に天使の羽の入れ墨をほどこした写真を掲載。同社のコンセプトである「ワインに秘められた芸術」のイメージを表し、伝統をアピールする広告が多いなか、斬新な映像で目を引きます。 
 一方、Bellinghamは「複雑な味わいのなかにほのかにチョコレートの風味」というメッセージとともに、毛並みがふさふさのチョコレート色の子犬を3匹ならべ、ワインのイメージを犬になぞらえています。
 チーズ生産にも力を入れるワイナリーFairviewの広告は、「私どものヤギたちがお客様を楽しませます」のメッセージ。実はFairviewには「ヤギの塔(Goat Tower)」と呼ばれる建物があり、ワイナリーのシンボルとして観光客を引き寄せています。
 敷地内のレストランの名前も「ヤギ小屋」。もちろん、ラベルのロゴもブドウ畑の横にそびえる「ヤギの塔」。ヤギを利用して統一したブランドイメージを築いています。
(たかさきさわか:ヨハネスブルグ在住)■

月刊 酒文化2009年04月号掲載