2010年サッカーw杯、いよいよ1年後に

 南アフリカでは二〇一〇年サッカーW杯のプレ大会として、六月一四日〜二八日にかけてコンフェデ杯が開催されます。これを機にW杯まで一気に盛り上がりたいところです。
 W杯の決勝戦は「サッカーシティ」というスタジアムで行われます。ヨハネスブルク南西のナズレック地区にあり、筆者の家からは車で約三〇分の距離です。このスタジアムは現在、約三〇〇億円をかけて大規模な改修工事が行われています。
 近くを通るたびに工事の進み具合を窺っていますが、拡張部分の骨組みがほとんどなく、心配した二年前からはかなり工事も進み、完成まであと一歩という印象です。
 サッカーシティは約一〇万人を収容する規模です。楕円形のスタジアムの外壁には、茶色をベースにした八色のパネルがモザイク調に繋ぎあわされています。モザイク調のパネルは、多人種・多文化の南アフリカを表現したものだそうです。
 多彩な色のパネルが織り成す独特のハーモニーを眺めていると、アパルトヘイトを乗り越え人種間の融和を求めるこの国の姿とどこか重なります。
 全体のデザインはなんとも不思議ですが、これは「カラバッシュ」、つまりひょうたんをイメージして作られています。アフリカではひょうたんが様々な用途に使われます。中身をくりぬき乾燥させたあと、半分に切って器にしたり上の部分を切って壺として使います。器や壺は料理用のボール、食器、種や穀物を保管する容器として使われます。
 農村に行くとカラバッシュに水や地ビールを入れて渡されることもあります。器を両手で受けとる時には、日本の正月にお屠蘇の器を受けとる感覚を思い出します。
 ところで、南アフリカで人種の違いを超えて愛される飲み物といえばビールです。地元のビール会社SAB(サウス・アフリカン・ブリューワリー)は、二〇〇二年に米国のビール会社ミラーを吸収合併しSABミラーとなりました。グループ全体では世界第二の規模を誇ります。
 同社がヨハネスブルクで運営する「世界のビール博物館」には年間約五万人が訪れ、観光名所のひとつになっています。ここではアフリカの伝統的なビールづくりのほか、世界のビールの歴史、醸造過程、包装技術などについて知ることができます。約二五〇円の入場料を払い、九〇分の博物館ツアーを終えたあとは、無料で二杯までドリンクが楽しめます。
 二〇一〇年サッカーW杯の公式スポンサーはバドワイザーが獲得しましたが、南アフリカで九八%と圧倒的なシェアを持つSABミラーもW杯効果による売上拡大を期待しています。
(たかざきさわか・ヨハネスブルグ在住)

月刊 酒文化2009年06月号掲載