コニーアイランドの地ビールで夏を乗り切ろう

 夏真っ盛り。今年の日本はかなりの猛暑と聞いている。ここニューヨークも暑いが、うだるような蒸し暑さはない。昼間は冷房の効き過ぎるオフィスにいるためか、アパートに帰ってもほとんどエアコをつけない生活が続いている。扇風機も(面倒なので)しまったまま。なんだか夏=暑い!を満喫(?)することなく秋になってしまいそうだ。出不精になっていないで週末くらいは海に行ってこよう。
 ということで行って来たのはマンハッタンから地下鉄で行けるお手軽ビーチ、コニーアイランド。イーストリバーを越え、ブルックリンの南端まで延びたところに路線の終着点となる「コニーアイランド駅」がある。昔は完全な島だった。その後川を埋め立てロングアイランドと地続きにしたものの呼び名はそのまま「アイランド」である。海沿いにはボードウォークが続き、土産物店やフードコーナー、水族館、遊園地が連なっている。レトロ感あふれる木製ジェットコースターは歴史的建造物として有名だ。そのほかにも絶叫コースターや観覧車などが併設され、夏の間は地元の家族連れ、観光客などでにぎわっている。
 ところで、全米では地ビールづくりがポピュラーになりつつあるが、ここコニーアイランドにも特製のビールをつくるブリュワリ―があるのをご存じだろうか。名前は「コニーアイランド・ブリューイング・カンパニー」。
 ビール好きの友人に聞いてみると「知ってる。マーメイドのロゴのビールでしょ」。確かに、ビーチから一本奥にはいったサーフアベニューのブリュワリー周辺には、インパクトのあるイラストがあちこちにお目見えする。メイクを施したマーメイドに、体にタトゥーをあしらった人魚のおじさん、いや、冠をつけているのでさしづめ人魚のキングか。
 ブリュワリーの屋外にはパラソルやテントが張りめぐらされたビアガーデン仕立てのスペースがある。でき立ての生ビールを飲みながら皆そこかしこで歓談中。子供連れも多いためか、飲料水コーナーもあり。
 メニューにあるビールは全10種類。人魚のイラストは「マーメイド・ピルスナー」、人魚キングのラベルは「マーマン・NY IPA」。ちょっと変わった名前は「コットンキャンディ・ケルシュ」。つまり綿菓子のようなケルンスタイルの鋳造ビール?なんでもフローラルホップとストロベリージュースを使いフィルターなしにミックスしたものだそうで色味もピンクがかっているらしい。一番アルコール度数の高いものは「ファングトゥース DIPA」の9%。しかし、高いといっても原料にフルーツ系ホップのアロマが使われているものが多く、実際は爽やかなテイストに仕上がっていそうだ。私が7ドル払って試したのは「ウォーターメロン・ウィート・エール」。その名の通りスイカの甘みとシトラス系のホップアロマがビールの苦みを抑え、スカッとする飲み心地だ。度数も4.8%なので何杯でもいけそうだ。ただ、根っからのビール好きという人には物足りないかもしれない。
 ブルックリン・ラガーほどの知名度はないが、このコニーアイランドビールは一般に流通しているのだろうか。帰りに寄ってみたドラッグストアチェーンのデュアンリードやホールフーズには「マーメイド・ピルスナー」、「マーマン・NY IPA」、「ハード・ルートビア」の6本セットなど定番商品が陳列されていた。ホールフーズにあったバラ売りの「マーメイド・ピルスナー」を1本購入。本日2本目のコニーアイランド地ビールを飲みながらこれを書いている。泡立ちがよくまろやかな味わい。扇風機も引っ張り出し風にあたりながら飲む地ビールに夏を感じる。これで今年の夏も乗り切れそうだ。
(あおきたかこ・ニューヨーク在住) 
2018年秋号掲載

月刊 酒文化2018年10月号掲載