ベルリンのライフスタイル─やっぱり王道のビールはかかせない!?

 前回に引き続き、またまた旅行に行った先の話である。7月はセドナ、8月はコラムにも書いたキュラソー。そして10月はイスラエル、ウクライナ、ドイツを廻ってきた。根っからの旅好きな私である。話題がしばしばアメリカから外れてしまうことをお許し願いたい。
 ところでイスラエルはワインづくりで知られている。きっと国をあげてブドウの栽培が盛んなはず。エルサレムの街中ではリカーショップがたくさんあるに違いない! などと期待して行ったが、見事に外れ、ワインを打ち出したPRなぞは見かけなかった。その代わり、浮力感を楽しめる「死海」の人気は相変わらずで、日本からの観光客がいろいろなところで死海の泥を成分とした美容クリームを買い求めていた。余談だが確かに、泥とミネラルは肌に良い。泥を塗りたくって死海に入り、泥を落とすと、肌が一瞬ピカピカ、つるつるに光輝くのだ(ただ、傷がある人が入ると拷問に近い痛みとなる)。
 さて、美容ならぬ酒ネタである。ウクライナのキエフは何もかもお安く(オペラハウス観劇が数百円〜)、ここは一発ウォッカ三昧? と思ったものの旅行中酔っぱらってくだを巻いているわけにはいかない、などと考えているうちにあっという間に最終目的地のベルリンへ到着した。そうだ、ドイツと言えばビールだ。アメリカのバドワイザーやクアーズが物足りなく感じる人は、日本のビールやドイツのビールを好むというではないか。
 さすがに期待を裏切らないビール王国である。どこもかしこもドリンクメニューにビールがある。目につくのはやはりドイツビールの売上の半分以上を占めるというピルスナータイプだ。ボヘミア地方、現在でのチェコが発祥地ではあるが世界に広がり、各地でオリジナルのピルスナーが生産されている。ベルリンでもピルスナーがよく飲まれている。
 そしてベルリーナピルスナーとともに食したいのが、ベルリン名物「カリーヴルスト」。ソーセージを一口サイズに切り分け、カレー粉とケチャップで味付けした簡単な料理で一緒にポテトフライやパンなどもサーブされる。駅や公園などファーストフード店のようなところで気軽に注文できるため、私も何回か食してみた。カレーというよりはケチャップの味が濃いような気がしたが、ビールとともに味わうソーセージということで、すっかりドイツ旅行を満喫した気分になった。「ハンバーガーとコーク」がアメリカ人の定番の食なら「カリーヴルストとビール」がベルリンっ子にとってのファーストフードなのかもしれない。
 またニューヨークでは、公園や歩道など公共の場でのアルコール飲料が禁止されているが、ここベルリンではどこもかしこもビール瓶を片手にした人であふれている。日曜日の蚤の市で、川沿いの芝生の上で、公園のベンチで、イベント会場の前で。家族連れより、カップルや気軽に友達と飲んでいるグループが多い。中には一人飲み女子もいる。ラベルにレモンやオレンジ表示があるのは、フルーツテイストのビールだろうか。ゲッサーというのは同じ東欧のオーストリア産のビール。レモン割りが人気のようだ。普通のビールが苦手、外で酔っぱらってしまったらと心配するなら、アルコールフリーと書かれた度数0.5%以下のビールもおすすめだ。シェッファーホーファーのヴァイツェンやイエバーなど複数のビールメーカーが発売している。
 日曜日の夕暮れは、高架線の下に並んだバーやレストランがにぎわう時間だ。目前に広がるシュプレー川とベルリン大聖堂を眺めながらビール時間を楽しむために、カラフルなビーチチェアが所狭しと並んでいる。気分は日本でいう夏のビアホールか。訪れたのは10月も半ば、ベルリンでは冬が間近である。外で飲むビールはこれが最後だろう。いや、ビール好きのベルリンっ子にとっては寒さも気にならないかもしれない。酒好きのツワモノが冬でも寒空の下でビール瓶を片手に談笑していそうだ。そんな光景を瞼に描きながら、ベルリン最後の夜を過ごした。
(あおきたかこ・ニューヨーク在住)
2020年冬号掲載

月刊 酒文化2020年06月号掲載